滝和也

ヌードの夜/愛は惜しみなく奪うの滝和也のレビュー・感想・評価

3.4
背徳感≒エロス
と言う不文律を犯す
狂気と殺意…。

何かイケナイモノを
見ている感触が全編
通して穿たれる…

石井隆ワールドの泥沼
に浸かりこむ…

「ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う」

天使のはらわたシリーズ、そしてヌードの夜と男と女の現実と幻想を叩きつけて来た鬼才石井隆の作品です。新鋭佐藤寛子をヒロインに、大竹しのぶ(死んでもいい)、井上晴美(フリーズ・ミー)そして竹中直人(天使のはらわた、ヌードの夜)を村木役に三度迎えて、石井組ががっちり固めています。

姉が妹を乱暴しようとした男を刺した。母と娘たちはその男を解体し樹海へ捨てる。だが…その男のロレックスも一緒に捨ててしまい、妹れんは捜さざる得なくなり、代行屋紅音次郎にヘリから散骨した際に形見を落としたとして、探してもらう…。そこから紅…本名村木は嘗て事件に巻き込まれた様に、悲しい性を背負ったれん、そしてその家族の苛烈な事件に巻き込まれて行く…。

嘗て天使のはらわたシリーズが日活ロマンポルノの名作であったように、今作はヒロイン佐藤寛子さんが…全編において見事な美しさを見せて頂けるのですが…

エロくないのです。はい。

確かに脱ぎっぱなし、曝け出しっ放しのシーンは長いのですが…どうも…。理由は背徳感が過ぎると言うことでしょうか。

まず全編血の匂いと言いますか、死の匂いに傾いている点。乗っけからバイオレンスですからね。そしてあからさまな殺意と狂気が全編に渦巻いている。惨殺系後妻業の皆さんですからね…。更にヒロインは狂気に堕ちた天使ですし…。

更に余りにも志向が偏りすぎた行き過ぎた性がヒロインに伸し掛かるため、悲惨になるんです。殺意や性とは確かに背徳感があり、エロスの発動がある訳ですが行き過ぎてしまうと…萎える訳です。

前作ヌードの夜から、復活した主人公村木。私、前作を見ていないのですが、伝聞から、どうやら変わってないみたいですね。純粋かつ幻想を女性に持った方のままなのかなと。その純粋過ぎる部分がハードボイルドやノワールには成り切れず、ややラスト近くのヒロインの狂気を薄めてしまっている気がします…。展開が薄っぺらさを感じさせるんですよ。ヒロインのれんに惹かれるのは同情からだけで、愛として不完全で、行動の理由付が弱い気がするんです。

キャストは凄まじい熱演で評価しやすいと思います。まずは佐藤寛子さん。凄まじいです。女優でしたね。正に。曝け出し、美しさと狂気を見せつける体当たりとはこの事。ただ…この方真面目な元生徒会長さんらしいんです。売り出し方がそうで…こちらも何か見てはいけないものを見てる気が…。それとかなり体を絞ってアバラが浮き出ていて悲壮感が出ていて素晴らしいのですが…エロとは反比例してますね…。

大竹しのぶは…相変わらずおっかない。この方はやはり憑依型女優てすわ。狂気を巧く演じてしまう。あのアンニュイな雰囲気が無くなり、怖さが前面にでてきちゃう。

13年ぶりに同役を演じた竹中直人さん。メジャーになってもアングラなキャラを忘れない辺りが竹中直人らしさでしょうか。TVは明るいキャラが多くて映画オリジナルは圧倒的にダークサイド(笑)冴えない探偵役が似合います。ピュア過ぎる役も含め。ラストの東風万智子とのシーンは味がありました(^^)

監督はネオン管の光、夜、闇、雨、血、石舞台とケレン溢れる舞台をこの演者に託し、狂気の世界を展開しています。確かにその世界観にどっぷり浸からせて頂きました(笑)撮影も光の加減が独特なんですよね、粒子を荒くしたり。どこか懐かしさを感じます。

作品としての脚本の面白さは今一歩であるものの演者の熱演と監督の独特世界観に支えられ、ラストまで楽しめた作品でした。まぁエロスって奴はシンプルながら難しい…(笑)そんな作品でした(^^)
滝和也

滝和也