ろく

琥珀色のキラキラのろくのレビュー・感想・評価

琥珀色のキラキラ(2008年製作の映画)
4.0
これで中野量太作品は全部見れた。共通してみることが出来るのは「家族の喪失」。そう中野は家族がいなくなることだけに拘って映画をとってきた。

それはデビュー作のこの小品でも見る事が出来る。そして単純にこう語りかける。「家族がいなくなったら寂しいにきまってんじゃん」、そうだ、中野作品はこの当たりまえなことを言うためだけに映画を撮っているんだ(ある意味全くそこがぶれてないので映画監督の中では私小説作家のようでもある)。

ぶれてないからどんと来る。ええ、そんなの言うなんてダサくねえ、恥ずかしくねえ、そんな文句に対し、「いやみんな家族が死んだら哀しいでしょ!」と言い切る。そこには衒いも気負いもない。あるのはドストレートな直球だけ。だからたまに中野作品は批判を受ける。「湯を沸かすほどの熱い愛」ではモラルとしてどうなのかという批判もあったし宮沢りえみたいな母親は毒親ではないかという意見もあった。「チチを撮りに」では最後のファンタジーについていけないという意見もあったし、「浅田家!」ではお涙頂戴だと言われた。

でもね、たぶん、中野はそんなこと考えてないんだよ。家族が死ぬ、それは今までいろいろあったとしても抜群に悲しくて切ないことなんだ。そう言い切ってしまう。この言い切り(ある意味勇気)に僕はクラっとくるんだ。


おおっと、本作。まさか「琥珀色のキラキラ」が検尿だとは思わないだろう(思うわけないよ!)。そんなポンコツスタートから最後は家族愛の話へ。こんな題材からどこまで持っていくんだよ!中野と突っ込んでしまう。最後のシークエンスのちょっとヘンタイっぽい展開も好き(これも中野の特徴)。処女作だけど中野作品の萌芽を見ることが出来たのが嬉しかった。

これで中野作品は全て終わり。あとは新作を待つしかないのか。ああ、いつになったらどんと来る家族の映画を見せてくれるのだろう。待ち遠しい自分がいる。
ろく

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