滝和也

ジーア/悲劇のスーパーモデルの滝和也のレビュー・感想・評価

3.6
無邪気、奔放、魅惑
そして究極の美。

孤独、深愛、寂寥
そして醜悪なる悲劇

儚げであり、豪奢。

その全てを持つもの。

「ジーア 悲劇のスーパーモデル」

若き日のアンジーがスーパーモデルの世界を開いた先駆者ジア・キャランジの短くも儚い人生を体当たりで熱演しています。

父母の不仲から、心に孤独を抱えた少女ジーア。その奔放な無邪気さと美貌を武器にスーパーモデルとして見出されていく。だが彼女の心にある隙間を埋めてくれるはずの者は彼女の子供の様な深すぎる愛を受け入れきれなかった。ドラッグに溺れていく彼女は…。

栄華と転落、スーパースターが歩む心の隙間に忍び寄る影を露骨にまで描いたストーリーです。実話を素にした作品故に、ストーリーがありがちだとか、有り触れたと言う事自体は陳腐でしょう。事実は小説より奇なりではなく、心の隙間に入り込むドラッグの恐ろしさとはそう言うもの、その通りなのでしょう…。故にその後半のドラマは重過ぎる展開でした。

その重さをより重くするために、前半はより高みに登る様な華やかさであり、サクセスストーリーでもあります。後半のため、高い所から落とせばより重くなる訳です。

その華やかさと転落の重さ、醜悪なまでの凄絶な人生をアンジェリーナ・ジョリーが熱演。正に彼女のための作品と言って良いでしょう。全てをさらけ出し、奔放さ、無邪気さ、究極の美を映し出す前半。そして醜悪なまでに落ちて、狂気を纏う後半と彼女に要求された演技レベルはかなりのモノですが、それをものともせず、演じきった彼女の技量、そして才能(持って生まれた容姿も含め)は見事でした。ゴールデングローブ賞に確かに値しますね。

前半部分の美しさは撮影、衣装も含めアンジェリーナ・ジョリーの美の説明書であり、後半は彼女の影の部分を映し出すやはりこちらも手引き書のようで、彼女のマネージャーだったらこれをハリウッドの製作者達に渡しながら営業したくなります。事実彼女のスターへの扉を今作が開いたわけですからね。

共演者も彼女のお相手となるリンダ役の方も清楚な美しさを持ち、そのアンジーとの対比もまた美しすぎるシーンを演出しています。女社長に懐かしのフェイ・ダナウェイが出演。相変わらずの美しさで作品に迫をつけています。

正直、ストーリーはわかっていて、休みの余裕がある時でないと、こちらの精神にダメージが来そうだったのでこのタイミングに。まぁそうまでしてアンジーの最強の美を見たかった訳です(笑)期待に応える眼福さとストーリーでした(笑)
滝和也

滝和也