かじドゥンドゥン

ANON アノンのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

ANON アノン(2018年製作の映画)
3.4
個人の脳内に高性能のコンピューターが埋め込まれ、適時必要な情報が視界にディスプレイされる近未来。記憶もまたデータファイルとして保存されており、容易に受け渡しや共有が可能。

主人公の刑事は、被害者の記憶データを手掛りに犯人を洗い出す捜査を行うが、ある連続殺人事件では、被害者の最期の視覚データが犯人によってハッキングされ、犯人視点の映像に上書きされていることに気づく。そして容疑者として浮上したのは、何の個人データも所有しない匿名の女(ANON)。空のコンピューターに等しいこの女が、闇稼業として他者の記憶をハッキングして改竄しているらしい。

刑事は、クライアントを装ってこの女に接近。しかしあまりの魅力に捜査を逸脱し、男女の関係に発展。体を交わしている際に、脳内のデータを読み取られ、刑事であることがバレる。

この失態で捜査を外された刑事は、謹慎中、例の女に視覚をハッキングされ、自分の不注意で息子を事故死させた際の映像を繰り返し見せられるなど、精神的に追い詰められ、そしてある場所に呼び出される。そこには、さらに別の黒幕に視覚をハッキングされた女が待っており、刑事はその黒幕(新人刑事としてこの捜査に関わっていた青年)によって殺されかけるが、間一髪のところで逆襲して、黒幕を倒し、そして警察の手が伸びる前に、刑事は女を逃がす。

女は自分の人生を細かなデータに断片化して、さまざまな人間に埋め込み、自分の人生(の全体的な記憶)を復元できないようにして生きているらしく、これからもその主義を変えないと言い残して、去って行く。一貫した個人としての人生や、その透明性を強要する社会への、一つの可能な反発か。