来夢

ANON アノンの来夢のレビュー・感想・評価

ANON アノン(2018年製作の映画)
3.8
ガタカの監督ってことで、映像よりストーリーに期待しながら鑑賞。けれどデザインがいけてた。
ブレード・ランナーから続くサイバーパンクなデザインって、上海的な派手な街並みが多いけれど、AR(拡張現実)で現在の街並みに白のみで投影される広告や個人情報からなる風景は、これまでとはまた違ったスタイリッシュさがあるね。
ストーリーは攻殻機動隊SACのインターセプターの回って言えばSF好きならわかると思うけれど、個人が見ている視覚情報がデータ化される時代に、データをハックされたり書き換えたりするって話(超ざっくり)。一見強固にガードされているように見える個人情報やプライバシーに対する脆弱性と、儚く消えていきそうなのに、消すことができない記憶。現代社会を手の届きそうな距離感の近未来に置き換えてみせるストレートなSF哲学は、SFと銘打ってはいるもののVFXだけに凝ったファンタジー映画とは別物だと言わんばかりの説得力がある。静かでありながら大胆な表現に監督のセンスの良さを再認識。
ヒューマンドラマ要素が薄いので、もう少しキャラクターを深堀りしてくれても良かったな。ちゃんと彼、彼女の行動理念を理解しながら観ないと、なんでそういう展開になるの? って思ってしまうかも。でも余計な肉を全部削ぎ落としてとことんシンプルにした感じは好みでした。最後のバトルはもうちょっと引っ張っても良かったとは思うけれどね。
あと、プロトコルとかそこら辺の用語が分からないと、この人たち何言ってるの?ってなると思う。
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