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悪の法則のotomisanのレビュー・感想・評価

悪の法則(2013年製作の映画)
4.2
 どうにも気になるのは弁護士は死ぬのか助かるのかどっちなんだろう。話の終わりで弁護士の下に細君の殺人ビデオディスク(たぶん)が届く。こいつを見て麻薬組織の芯からの共犯者になれ(話半ばでブラピが漏らしてたように)と、映画が言ってるような気がして来た。そうでないとしたら、この嫌われ人種(米国人白人男性弁護士金持ち。たぶん)にどんな死に方が待っているのか想像もつかない。しかし、映画は決して死んでお終いと済ますような安直さを感じさせない。
 少なくとも黒幕の一翼たるキャメロン D.は弁護士の実情を知っているわけで、全てこの新参者の腹のくくり具合をじわじわ確かめようという事だろうか。狙いはペネロペから亭主を奪い取るためでもあろうが、D.の元にあっては弁護士も性玩具で終わるのが関の山か。しかし、弁護士が終盤頼った電話の男は実に懇ろに説いている。思慮深いはずの者が愛に惑って裏世界に参入する。そこで危機に瀕して元の世界に戻ろうにも転回点は既に無く、妻さえ救えず置かれた状況を受け入れるばかりであると。それでも唯我一人思慮深く受け入れていればそれで生きていける。実によい助言である。表の世界だけで生きている我々にも時に当てはまりそうだ。
 弁護士もいづれ誰からか迎えが来て何らかの役割を担わされ、思慮深く生きられるかもしれない。なにしろ裏世界の住人の表側代理人を務め、これほどの不条理にも拘らず愛妻の身の絶望を受け入れた訳であるし。ハリウッド映画ならここから逆襲劇復讐劇が始まるとこだが、それは無い。
 犯罪は引き合わないというけれど、極僅かながら引き合う分岐を選べる立場の者がいて、彼の人物は弁護士に助言したり、昼寝の時間も取れるかもしれない。そうで無いものはワイヤで首を刎ねられる運び屋稼業で終わったり、殺人ビデオの餌食になったりするのだろうが、弁護士には前者に列する資格も能力もあるのだ。
 勝ち組と言えばキャメロンD.もである。初見、誰かと思ってしまったが役にピッタリ。乳房の付いたスーツを纏いたい男の事を余所で聞いたことがあるが、チーター紋で身を飾りたい女と言うのは中々だ。次の話は香港からまた何処に飛ぶことになるのだろうが、チーターのように最速で切り抜けていくのか。それともチーターの片割れシルヴィアが死んだように何かで死ぬのか。我一人生きるD.ではあるが、やがてボリートが首にかかるとき、いつかの落日の夢を見るような気がする。
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