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ルパン三世 GREEN vs REDのerikaのレビュー・感想・評価

ルパン三世 GREEN vs RED(2008年製作の映画)
4.5
「ルパンには国籍も国境も
 関係ないのだよ
 彼は自由そのものだ」

めちゃめちゃ面白い✨タイトルもポスター画も初めて見る初見も初見!!たくさんあるルパン三世シリーズの中でもストーリーが難解で、かなりキワモノ扱いされている問題作らしい💦そんな作品だからか何処も配信してなくて困ってたら、流石!TSUTAYAでレンタルしてました。こういうときは本当にTSUTAYAが頼りになってありがたい🙇

個人的に意図せずして鑑賞するのには最高のタイミングだったなー。というのもこの作品の面白さは、ルパン三世の"活躍劇"というエンタメ性ではなく、ルパン三世の"存在定義"というメタ的な視点にあるからです。ここ1週間、劇場版第1作の『ルパン三世VS複製人間』から始まり初3DCGの『ルパン三世 THE FIRST 』、実写版である小栗ルパン、原作色が強い『LUPIN THE IIIRD』シリーズ。そして昨日観た世間一般的な"ルパン三世"の代名詞『カリオストロの城』。様々な監督によって描かれた"ルパン三世"を観たからこそ、この『GREEN vs RED』を楽しんで観られたな✨単独で観ていたらここまで高スコアをつけることもなかったし、『GREEN vs RED』の面白さにも気づけなかったと思います。

ここから先は考察というか私がこういう意図があるのかなーって感じたことを...。モンキー・パンチさんに関する逸話はwikiで知ったものです。めちゃめちゃ長く語ってますが、あくまで個人的な解釈なので見当違いなことを言っててもご容赦下さい笑 ストーリー上のネタバレは書かないと思いますが、この『GREEN vs RED』を100%楽しむには差し障りがあるかもです💦これから観る予定の方は念のため回避をお願いします🙏

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OP・EDで流れる「炎のたからもの」やアジトで上映される『カリオストロの城』、黄色いフィアットの爆走シーンなど『カリオストロの城』(以下『カリ城』)は他作品に比べて特別な扱いに感じられます。そういった意味で『カリ城』は本作において強烈に存在を意識されているタイトルと言えるのではないでしょうか?そして、それを前提とすればタイトルの"GREEN"はさしずめ宮崎駿監督の描くルパン三世。対して"RED"赤いジャケットは宮崎ルパン以外のルパン三世になるのかな。

長くなりそうなので結論から。この作品の伝えたかったことは、"宮崎駿ルパンへの「リスペクト」と「脱却」"だと思います。タイトルは『GREEN vs RED』ですが、実質は「宮崎ルパンvs宮崎ルパンに影響されたルパンvsオリジナルルパン」のイメージです。

原作ルパンは女性への優しさはあれどあくまで盗みを生業にした悪人というスタンスですが、宮崎駿ルパンには正義のヒーローの側面が強く描かれています。『カリ城』は繰り返しTVで放映され、更には劇場で復刻上映される不動の人気作です。そのため宮崎駿さんの作り出した女性に優しく正義のヒーローであるルパンを、多くのファンは"ルパン三世"として認識していて、その数は原作ルパンファンに匹敵もしくは超えてしまうほどかもしれません。原作と『カリ城』どちらが好きかによって、「あの性格のルパンはルパンじゃない!」としばしば論争が起こるのもある意味仕方がないことなのです💧

どちらが正しいということもなく、原作者のモンキー・パンチさんも「『これは僕のルパンじゃない』って言ったんですね。『僕には描けない、優しさに包まれた、宮崎さんの作品としてとてもいい作品だ』」と言葉を残しており、「宮崎さんは宮崎さん流のルパンを出した」と評しています。本作からもそのリスペクトは随所から感じられ、特に勝鬨橋で緑ジャケルパンを脇に置いての、赤ジャケルパン・次元・五エ門の3人の会話。五エ門の「だまされてはおらぬ...そこにいるのは紛れもなくルパンだ」次元の「本物かどうかなんて問題じゃねえ、組んだら他のどんな奴とやるよりよりおもしれえ、そういう奴のことだろう?ルパンってのは」は、ルパンの姿は1つに留まる必要がないということを示す分かりやすい台詞です。

しかし、その反面『カリ城』にはその人気の高さゆえに、宮崎駿ルパンから逸脱した性格のルパンが認められ難いという負の影響もあるように思うのです。モンキー・パンチさんは『DEAD OR ALIVE』を自ら監督しましたが、演出で「ルパンが敵を後ろから刺す」というシーンの提案を、スタッフに「ルパンはそんなキャラではない」と原作者にもかかわらず却下されてしまったというエピソードがあります。また、「『カリオストロの城』以降、作る人がみんな宮崎さんに引っ張られている。」「宮崎さんしか出来ないのに、他の演出家が自分の好みではないのにやろうとしているから無理がある。その人が持っている個性で動かしてくれればいいんだけど、宮崎さんのに引きずられている」との苦言もあります。

本作の脚本を務めた大川俊道さんは他にもルパン三世の作品を2作手掛けています。内容はうろ覚えですけど不二子ちゃん以外のヒロインがいて盗人業と平行して女性を助けるところは『カリ城』に通じるとこがあったように思います。『GREEN vs RED』の作風からはギャップがありすぎて驚きました。原作者でさえ宮崎駿ルパンの影響から逃れられず演出に却下を食らうのです。ちょっと妄想入っちゃいますけど、製作していくうえで引っ掛かるようなものがあったんじゃないかなーなんて。だからこそ大量の偽物達は過去のルパン三世作品の姿をしているのかなと思ってみたり。明らかに偽物なルパン対決した五エ門と次元の「つまらぬもの...だとは思わんが。明日を未来を破壊することなど誰にも...許されることではないのだ」「いてぇ目見たほうがいいのさ どうあがいても他人の褌じゃ相撲はとれないんだからな」はそう考えてみると痛烈な苦言に聞こえてくるのです。

ちょいちょい出てく紅屋の主人って重要ポジですよね~。私どうしても紅屋の主人が宮崎駿さんに似ているように思えて仕方ないのですが、皆さんどう思われているのかな?思い込みが過ぎてますかね😅ただ、紅屋の主人を宮崎駿さんだと仮定すると、私的にラストシーンの収まりが良いし色々と納得できることが多いんだよね。というのも紅屋の主人はラーメン屋に緑のジャケットを忘れてたりわざとワルサーをスらせたり..."紅"屋を営む壮年の男性が"緑"のジャケットを渡し、ラーメン屋の彼を本物に匹敵し得るルパン三世に作り変える。原作があり絶対的な指針があるはずの"ルパン三世"というキャラを、『カリ城』を通して原作者に評価されるほどの新しい"宮崎駿ルパン"を作り出した宮崎駿さんを彷彿とさせませんか?

そして、そこからの紅屋の主人に「お疲れ様」と声を掛ける不二子ちゃんと、警察無線の「奴は...新型だ」という台詞です。特に警察無線の"本物"ではなく"新型"の言葉選びがポイント。これこそが私がこの『GREEN vs RED』の伝えたかったことを"宮崎駿ルパンへの「リスペクト」と「脱却」"とした理由です。『ルパン三世』というシリーズは今後、敬意を持って"宮崎駿ルパン"に別れを告げ、原作の魂を持ちつつ原作を超える"新型ルパン"を作り出していこう。『GREEN vs RED』にはそんな提起や決意表明のようなテーマも持った作品だったのだと私は結論づけたのでした。

やっと着地できた〜。長かったよー😭『トゥモロー・ウォー』で最長記録更新したばっかりなのにまた更新してしまった💧ここまで真面目に考察(という名の妄想?)をしたのは初めてだなぁ。個人語りな長文にお付き合いいただきましてありがとうございました👋
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