オレンチ

ファントム 開戦前夜のオレンチのレビュー・感想・評価

ファントム 開戦前夜(2012年製作の映画)
3.0
1968年の冷戦時代、不可解な行動をとったソ連の潜水艦。
1974年にこれをサルベージする作戦『プロジェクト・ジェニファー』が題材となった映画。



◼︎潜水艦ものにハズレなし

よく潜水艦モノにはハズレがないと言いますよね。僕もそう思います。
なぜ、潜水艦モノにハズレがないのか、僕なりの解釈を4点ほどあげてみたいと思います。

1. 潜水艦は闇が深い
潜水艦は歴史の闇が深いです。特に冷戦時代。それは潜水艦の性質にあるかと思います。
潜水艦の特徴は、高い秘匿性と高い攻撃力があるかと思います。
攻撃力とは核ミサイルを発射できることですね。
この二つを合わせて考えると、"何処からでも敵国に気付かれずに核ミサイルを発射できる"という事になります。
潜水艦とは、最も核戦争の引き金となりえる兵器であり、その秘匿性から歴史の表にでなかった闇の歴史がゴロゴロとあるんだと思います。
だからこそ衝撃の事実として映画になりやすいんでしょう。

2. 絶対に出ることのできない密室
一度潜ってしまった潜水艦からは絶対に出ることができません。
狭い艦内に80人強の人間が、数か月に渡って缶詰状態になるわけです。
実体験ですが、24時間数ヶ月ずっと同じ環境に缶詰になると、人は本性を現しやすくなります。
だからこそ緊迫した人間ドラマが生まれるのでしょう。

3. バトルが熱い
やはり潜水艦モノはバトルが熱いです。
潜水艦ほど特殊な戦闘をする兵器はないでしょう。
魚雷を1発でも被弾すれば、ほぼ致命的。
そんな戦いを音だけを頼りに繰り広げるのです。
暗闇の部屋にナイフを持ち、自分に敵意を持っている人間と二人っきりな状況を思い浮かべてみてください。
どれだけ緊迫した戦いかなんとなく想像がつくかと思います。

4. 音響が良い
これはオマケ的ですが、5.1ch、7.1chの環境さえ揃っていれば、潜水艦モノは高確率で音響が良いです。
映画はゲームと違って一人称でも三人称でもなく(POVは除く)今起こってる事の全容を映したいわけですから、音も結局平面的になりがちです。
潜水艦モノは殆ど狭い艦内で物語が進むため、音も後ろに回りやすいみたいです。
滴る水の音や何かを修理する音。機械の駆動音などその場にいるような臨場感に溢れる作品が多いです。

以上が僕の考える潜水艦モノにハズレがない理由です。



◼︎これぞ衝撃の事実(ネタバレ?)
上記でも書いたように衝撃の事実という面では本作も例外ではありません。
何処まで事実かは今となっては判断できませんが、十分説得力のある内容だと思います。
なぜ説得力があるのか?ここではその理由を箇条書きであげたいと思います。
史実である事と、"衝撃の"部分にはなるべく触れずに書くつもりですが、見る人から見たらネタバレになるかもしれないので、予めご了承ください。

アメリカとソ連が冷戦真っ只中だったという事を前提にお読みください。
・核ミサイルを積んだソ連の潜水艦、K-129が行方不明となった。
・K-129の作戦海域を大きく外れたハワイ沖で沈没しているのが見つかった。
・K-129に搭載されていたはずの核ミサイルが無くなっていた。

上記に挙げた3点は紛れもない事実です。
K-129に果たして何があったのか?それを描くのが本作です。
もし映画の内容が事実だとすると、歴史のターニングポイントと言ってもいいほど衝撃でした。



◼︎キャストが魅力たっぷり
これはかなり個人的な意見ですが、本作のメインキャストとなる3名が非常に好みなキャスティングです。

まずはエド・ハリス。ドイツ兵にはエド・ハリス。
もう定番すぎてなんの違和感もありませんね。あるのは威厳だけです。

続いてデヴィット・ドゥカブニー。
X-FILEのモルダー役が圧倒的に有名ですが、ちょいちょい映画も出てるんですよね。
でも大体は頭を使うタイプの役ですが、本作ではバリバリのタフガイで闇の深いKGBです。
いつもと違うドゥカブニーが見ていて面白かったです。

最後はウィリアム・フィクトナー。
この人の役が一番嬉しかったです。
『アルマゲドン』でフィクトナーを知った自分には英雄的なイメージがあるんですよね。
この人もちょくちょく映画やドラマに出ていますが、大体クズだったりするんですよね。プリズン・ブレイクのマホーンはカッコよかったりクズだったりで安定しなかったし。
しかし本作では終始誇り高き軍人でした。これぞ見たかったフィクトナー!って感じでした。



◼︎結末が悪い意味で唖然(ネタバレ有)


間あけます







ここまで最高に面白かったのですが、結末で一気に冷めてしまいました。
今までリアリティを貫いてきたのに、タイトルの"ファントム"に掛けたかったのか、いきなりファンタジーのようになってしまうのは正直ガッカリです。

とわ言え、衝撃度では間違いなくお勧めできる一本です。