櫻

終わりゆく一日の櫻のレビュー・感想・評価

終わりゆく一日(2011年製作の映画)
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一日のはじまり。明るい空がだんだんと暗くなり、街は翳りゆく。夜、暗くなった空、街はネオンで明るく照らされる。

幾度もかかってくる電話。受取手は、いつまでも不在を貫いている。返事が返ってくることのない向こう側へ、受話器を通して語られる日常の断片。そうして断絶と接続を繰り返していく、つぎはぎだらけの日常。ぶつぶつと途切れながらも、ある葛藤や生死が隣り合わせで灰色の雲のように流れていく。

15年という時の中で変わりゆくもの。父は亡くなり、妻とはすれ違い、子は成長する。その変化の記録は、すこぶる淡々としていた。日常の機微は気づかないほどに微小だけど確かに移り変わっては、生まれたり消えたりする。

行方知らずの明日。誰も知らない明日。私たちはこれからどうなるのだろう。一抹の不安は消えて行かず、影の中であいもかわらず蠢いている。

「次会うまで、生きてろよ。」
櫻