Fitzcarraldo

ラストエンペラーのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
2.5
第60回アカデミー賞(1988)でノミネートされた9部門すべて受賞したBernardo Bertolucci監督作。

溥儀の自伝『わが半生』を原作に、Mark PeploeとBernardo Bertolucciの共同脚本。

日本人として初めてアカデミー賞作曲賞を受賞することとなった坂本龍一曰く、いつもエンニオ・モリコーネがやっていた音楽なので…彼をさしおいて音楽をやらせてくれとはベルトリッチには言えなかったと…

俳優として撮影も終わって何ヶ月か過ぎた頃に、ベルトリッチ監督から急に連絡があり、音楽をやれと…2週間でやれと言われ、不眠不休でやったと坂本龍一。

そもそもベルトリッチ監督に紹介してくれたのは大島渚だという。

何かコトが動くには、人の縁が大事なことなんだと改めて感じる。


2023年1月5日(木)にNHKで放送された『坂本龍一 Playing the Piano in NHK & Behind the Scenes』の中で、鉛の鍵盤でも弾いているのか?と思うほどに、ミイラのようにか細い手で懸命に鍵盤を弾いている姿や、どうにか搾り出すように発するインタビュー姿を見て…あぁ教授が死んでしまう…もう長くはないなと…

その放送を見て以来、彼の作品をエンドレスで聴き続けてきたのだが…
彼の作品群により長く触れることで何かの力になれないかと思ったが…やはり亡くなったしまった。


ラストエンペラーの映画の方は小学生の頃か?テレビ放送を親父が見ていたのを、他のチャンネルにしたいのを我慢しつつ仕方なく見ていたような気がする。

小学生には何の意味も分からないので、ただただ退屈で途中で寝てしまったのか…何も覚えてない。

ということで、劇場で上映しているこのタイミングで追悼鑑賞。

教授の曲の方を先行して聴きまくっていたので、美しい画のバックに流れる映画音楽として劇場で見れたことに興奮しつつも…

ほぼ全てのキャストが当たり前に英語を話していることが気持ち悪く…ラストまでこの違和感が拭えずに終始乗れなかった…。

今でこそ配信が当たり前になり、アメリカ人も字幕を読む癖ができてきて、現地の言葉で話すのが普通になり始めてきたらしいのだが…ほんの少し前までは字幕を読む習慣がなかったというので、まぁ致し方ないとは思うが…いまの時代からすると、やはり気持ち悪い。

中国最後の皇帝の物語なのに、幼少期から自然に英語話してるのは…気持ち悪いだろ?それだけで萎えてしまう。

最後まで英語を話していることに慣れることはなかった…。

せっかくホンモノの故宮で撮影していても、すでにニセモノの言語で話しているために、相殺されてしまい特に印象的とも思えなくなってしまう。

皇帝即位の式典の画はメチャクチャ凄いんだけどね…相殺させてしまうのは勿体ない。

途中、Peter O'Toole演じる家庭教師のレジナルド・ジョンストンが溥儀に、「言葉は大切ですよ」という台詞があったと思うが…いやいや、言葉が大切だと思うなら、英語ではなく中国語で話してほしかった。

外の世界に興味があるから英語を学んだってことにするなら、そこからは英語でいいけど、せめて子ども時代は英語ではなく中国語でやってほしかった。言葉の大切さを作り手がキチンと感じていたのなら…

結局、商売優先なんだろう…


あと…人の一生を描くから尺が長くなるのは仕方ないのだが、それにしても要点を得ていないと思う。

溥儀がどういう男なのか、本作を見ただけでは全く分からない。おっぱい好きの甘えん坊の子どもだったことくらいしか…

戦犯収容所の所長がデモ隊に拘束されてるのを見かけた溥儀は、「この人はいい先生なんだ!」と突然喚くのだが…はて?

なぜ溥儀が庇おうとするのか、その心の内が全く見えないし、その行動を全く理解できない。

完全に置いてかれる観客。

他にも、なんで?という場面が多かったがいちいち覚えていられない。

もしかしたら219分のオリジナル全長版であれば、その辺りの心の変遷なり性格描写なり丁寧にキチンと描かれているのかもしれないが…

163分版だと単に長く感じるだけで何も理解できないし感情移入もできず、寝ないように頑張るしかないという地獄のような時間となる。

ただただ教授が奏でる旋律に救われた…
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