もとまち

徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑のもとまちのレビュー・感想・評価

3.8
牧口雄二の演出がエモーション迸りすぎてて辛い。スクリーンいっぱいに振り撒かれる情感。断末魔のように鳴り響くスコア。途方も無い絶望に呑まれながらもがき苦しむ者たちの絶叫。これに比べりゃ石井輝男の異常性愛路線なんかは視点がドライでまだ全然マシに思える。牧口は人間の感情を過剰なほど懸命に捉えようとするから、否が応でも観客の心が揺さぶられる。一話、何と言っても汐路章の怪演に尽きる。種類豊富な拷問を駆使して血の池地獄をこの世に現出させんとする極悪非道っぷりは、映画史を見渡してもそうそういないレベルの鬼畜度。歓喜と絶望のボルテージが同時に高まっていく「牛裂きの刑」シーンヤバすぎる。二話、一転して川谷拓三のコミカルなテイストが全開。場面繋ぎのコメディが巧い。しかしそれも序盤だけで、拓ボンの人間臭い存在感がむしろ余計にことの悲愴感を強めていく。物語が進むたび日陰者のペーソスが溢れ出てきてクソ泣ける。オチも良い。虐げられる者は虐げられたまま、悪徳のみが栄えて終わる。観客の神経を逆撫でにすることにのみ全力を注いだ一時間二十分。
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