猫脳髄

徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑の猫脳髄のレビュー・感想・評価

3.3
牧口雄二による2話オムニバスの残酷時代劇。前半は長崎奉行による隠れキリシタンへの苛烈な弾圧の模様、そして後半は足抜けした深川芸者とその女衒を待ち受ける凄惨な拷問と刑罰をストーリーの柱にしており、両者に関係性はない。

濡れ場も加味した残酷時代劇は本作に始まるものではない(※1)が、東映の帝王・岡田茂の号令のもと、同年に日本で公開されたフィンドレイ夫妻によるハッタリ・エクスプロイテーション映画「スナッフ/SNUFF」をめざしたとされ(※2)、和製エクスプロイテーションを明確に意識した作品として位置づけられる。

タイトルバックに残酷な戦場写真や原子爆弾のキノコ雲のモノクロ写真を配して、観客に本作の性格を予感させる。前半の長崎編では、汐路章が残忍な奉行に扮して、隠れキリシタンたちをありとあらゆる方法で拷問、処刑し、クライマックスではヒロインを牛裂きの刑に処する。後半の深川編は、監督の盟友でもある川谷拓三扮する女衒が、芸者を足抜けさせての逃亡劇である。打って変わってこちらは女囚モノ的なリンチ描写と、捕縛された川谷への鋸引きがハイライトで、前半よりもややドラマ性を重視する。

人体破壊描写はこの時期としてはなかなか研究されており、小規模なものであれば、カットを割らずに描写できている(※3)。ただ、前半の描写重視でサディックなシーンがカタログ的に羅列されていくだけなのは、やや飽きがくる(しかしそれがエクスプロイテーション映画の本質でもある)。江戸時代にありえざる設定や汐路のコミカルな演技(※4)を組み込み、残酷描写とペアリングを図り、ゴア表現を正しく味つけした点は評価したい(※5)。

※1 例えば日活ロマンポルノの曽根中生「くノ一淫法 百花卍がらみ」(1974)など
※2 お蔵入りしていたフィルムに、追加撮影した数分程度のゴアシーンを付け足しただけのゴミ映画である
※3 残念ながら「牛裂き」は、規模も大きくカットを割ったうえに、やや不自然な仕上がりになってしまった
※4 ありえない巨大アクリル水槽の登場や、汐路が"That`s Perfect!"と狂喜するなど失笑もの
※5 同じ牧口の残酷ピンク映画「女獄門帖 引き裂かれた尼僧」(1977)にも登場するが、児童相当と思しき役者を残酷シーンに登場させるのはなかなかキワドイ。洋画であれば裁判沙汰である。火箸で女児の目を潰したのはやりすぎか
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