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旅人は夢を奏でるのOASISのレビュー・感想・評価

旅人は夢を奏でる(2012年製作の映画)
3.0
人気ピアニストになった息子と35年ぶりに突然現れた父親が、とある場所を目指して旅するロードムービー。
監督はアキ・カウリスマキの兄であるミカ・カウリスマキ。

最近観た「ネブラスカ」とかぶる部分もあったが、描いている親子関係やメッセージはまた違ったものがあった。
父親のふてぶてしくも憎めないキャラクターは共通しているかも。

一人息子だと思っていたはずが実は姉が居たり、さらに自分も本当の子供では無かったり。
隠し事ばかりの父と旅先で出会う人達との交流を描く前半はくすりと笑える部分もあってゆるい面白さがある。
中盤、女性を落とす為に父と行うセッションをきっかけに徐々にシンクロし始める親子の動作、関係等もありきたりではあるがやはり観ていて心地良い。
予期せぬ親子のベッドシーンもインパクトあり。


そして父の本当の目的が明らかになる後半は、冒頭部分に語られた「射手」の話がキーワードになって、本当に息子に残したかった物とは何だったのかが浮き彫りになってくる。
「何かを残したい」という気持ちは「ネブラスカ」と共通している部分でもあったので、鑑賞後にじんわりと思い出して余韻に浸るタイプの作品ではあります。

ロードムービーとしてはほとんど驚きは無く、本当の目的は常に分からないまま進むので前半〜中盤にかけては退屈気味だが、後半からは真相に向けて盛り返すので面白くなってきた。
抑揚が無いと言えば無いが。
フィンランドが舞台という事で、「たき火」の映像を延々流しているTVが映っていたりするように、そういう文化やゆるやかに流れる時間を楽しむ映画なのかもしれない。
弟であるアキ・カウリスマキの作風っぽさも感じさせるし、意識せずとも兄弟は通じ合うものなのだなと思いました。

@シネ・リーブル梅田
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