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鉄くず拾いの物語のadeamのレビュー・感想・評価

鉄くず拾いの物語(2013年製作の映画)
3.0
旧ユーゴスラビア出身の社会派ダニス・タノヴィッチがショッキングな実話を演技経験のない本人たちを役者として起用して再現した半ドキュメンタリーのドラマ。
ダルデンヌ兄弟を思わせるテーマ選びとアプローチで、鉄くずを売って暮らす貧しい一家が直面する冷酷な社会の仕打ちを生々しく描いた物語です。
医者以外は全て当事者が本人役を演じているらしく、悲劇のきっかけとなる流産でソファに寝込んでしまった母親の周りで無邪気にテレビを見る子供たちの姿がリアルで、それを手術中に病院の廊下でも繰り返すことで一家を襲っている厳しい現実とのギャップが強調されています。
電気が復旧して部屋に明かりが灯るラストは、改善はされないまでも元の暮らしが取り戻されたことを示す希望ある結末だった気がします。
しかしその後の現実世界で父親を見舞った悲劇を知ると、その慎ましい暮らしとささやかな幸せがいかに尊いものだったかを思い知らされると同時に、こうした環境と状況から抜け出す道はなかったのかとやるせない気持ちになりました。
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