このレビューはネタバレを含みます
原作は湊かなえさん、題材の幅が広い。
今回は殺人事件に加えて、snsとメディアによる個人情報の漏洩、憶測による無責任な誹謗中傷がテーマだった。
映画を見ていて、腹が立ち、呆れてしまったが、これがリアルな現代だと思うと、情けない、やるせない。
人のことをあーだこーだ憶測でいうコメンテーターを置いたワイドショーやニュース番組が主流の今のテレビ番組が、
いかに意味がないか、むしろ世の中の邪魔をしているかを、滑稽に描いてくれたのはよかった。
ただ、メディアやsnsに対する消費者の反発心を煽るように作られた映画だとも思えてしまい、
どこか陳腐さも感じられてしまった。
そもそも映画として、作中の表現やメッセージに、尖りはあまり感じられなかった。
キャストをガチガチに固めて、当たり障りのないように内容を丸められ、広くウケるように作られた映画、とも感じた。
原作者の意図を考えてみる。
snsで憶測を無責任に言い合う危険性の示唆、テレビのニュース番組の質を問う投げ掛け、
あと、この映画では終始一貫して、全てが浅はかに、まとめられていた。
コメンテーターのコメントも、綾野剛演じる制作スタッフの事件を追う動機も行動も、番組スタッフの都度都度の反応も、取材された人達のコメントも、殺人の動機も、殺人の方法すらも。
唯一、深みを帯びていたのは、引きこもりの旧友の言葉と、記憶の中での二人の関係くらいかもしれない。あとは染谷くんのたまの発言も、どこか意味深かった。
全体的な作品中の出来事の浅さは、これらの目立たせたいポイントの深みをより際立たせるためだったのかもしれない。
このあたりは原作者と、監督の意図と考えられる。
もしかしたら、この映画で本当に伝えたかったのは、
snsがどうとか、テレビがどうとかではなく、
大切な関係性とは何か、友を大切にするとはどういうことか、を言っているのかもしれない。