Jeffrey

花咲くころのJeffreyのレビュー・感想・評価

花咲くころ(2013年製作の映画)
3.0
「花咲くころ」

冒頭、1992年春。ジョージアの首都トビリシ。ジョージアは前年にソ連から独立し、ガムサフルデァ初代大統領と反対派が対立。エカとナティア、2人の少女。複雑な家庭環境、拳銃、手紙。今、友情とガールズトークが炸裂する…本作はジョージア・ドイツ・フランス合作のナナ・エクチミシヴィリが監督、脚本を務めた2013年の映画で、去年の夏に劇場公開され気になっていたが、今年になってDVDが発売されたので購入して鑑賞したが良かった。 第14回東京フィルメックスの最優秀作品賞をはじめに、絶賛された作品を7年越しに初鑑賞。本作の主演2人の女優はサラエボ国際映画祭の主演女優賞を受賞したらしい。

さて、物語は 1992年春ジョージア、首都トビリシ。古い歴史を持ち、他国からの侵略を受けながらも、自国の言語、文化、宗教を守ってきたジョージア人の人々。だが旧ソ連から独立した後、トビリシ内戦とも言える市民同士の紛争によって国は荒廃していた。厳しい対立が社会に影を落とす中、14歳の少女エカと親友ナティアの2人は周囲の大人たちに反発を覚えながらも、二度と来ない季節を生きてゆく。

本作は冒頭にバスの座席に座っている少女の横顔をとらえるファースト・ショットで始まる。彼女は途中でバスを降り、ボロアパートの階段を上っていく。扉をノックするとカットは変わり電話をしている少女(お姉ちゃん)と母親らしき女性が出迎える。彼女は家の中に入り、手紙を母に渡す。台所の椅子に座り手紙を読む母、少女は自分の部屋の机に向かい座る。ここでタイトルロゴが出現しショットが変わる。少女は外にいる。そこには人の群れがある。彼女は友達と一緒にその群れの中に入る。割り込みだと老婆がわめき散らす。どうやら物資のパンをもらうためにみんな並んでいるようだ。カメラはその群れる群衆をクローズアップで捉える。少女の名前はエカ。

続いて、エカと一緒にパンをもらいに行っていた友達の少女の家庭環境が写し出される。彼女の名前はナティア。彼女はベランダから外でサッカーを楽しんでいる弟に早く戻ってきなさいと大声で言う。カットは変わり、エカが小さなトンネルをくぐり抜けると少年2人が彼女に絡んでくる。彼女は手に2つのパンを持っている。彼らはお腹すいたからパンをよこせと言うが彼女は渡さない、少年2人は何もせずにその場を立ち去る。カメラは少年2人がトンネルをくぐりぬけ反対側へ行く後ろ姿をとらえる。カットは変わり、エカが自宅の台所でパンを切っている描写、笑い声に釣られ自分の部屋へやってくると姉貴が友達と一緒にタバコを吸っているのを見かける。彼女は部屋から出て、鏡で自分の姿を一瞬見て、向かいの半開きのドアを開け中へと入る。そしてクローゼットを物色する。次に箪笥を物色しソビエト連邦と言うパスポートや手紙、腕時計、タバコなどを彼女が手に持ち確認している。カットは変わり、ナティアの食卓場面へと変わる。

酔っ払っている父親に対して不満な顔をしている妻に彼が物を投げたことによって2人が大喧嘩する。そこに弟がやってきてご飯を食べようとするが、おばあちゃんが彼にきつくあたる。すると彼女がフォローする。すると向こうの部屋で喧嘩している両親の怒鳴り声が強くなり、確認しに行くとワインのボトルが割れている。それはおばあちゃんのワインでおばあちゃんが怒りだす。彼とは変わり、エカが授業をしている学校のクラスの中へと移る。女教師は机と机の間をぐるぐる回りながら生徒たちに静かにしなさいと叱る。すると1人の少女が遅刻してやってくる…と簡単に説明するとこんな感じで、複雑な家庭環境を描いた作品だが、いまいちピンとこないというか感動しない。

ただ、強制結婚されるために車の中に監禁拉致されて強制的に結婚式を挙げられると言うジョージアの負の文化が怖いなと感じた。当時の目まぐるしい情勢の中、人々は他人に責任を押し付け合っている不幸が日常茶飯事なんだなと、それと今回は2人の少女を軸に物語が展開する中、2つの家族が捉えられているが、共に若者たちは両親と一緒に暮らしており、自立する機会がほとんどない環境なんだなと感じてしまった。それとどうも女性監督と言うことでフェミニストさがあるようだが、そこまで酷さは感じない。

エカが友達の結婚式で男性舞踊を踊るシーンは印象的で、あの踊りが彼女にとっての精一杯の表現だったのだろうと感じる。それとワンシーンワンカットで撮っているのもこの作風の表現の仕方だろう。
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