黒田隆憲

ブラックフィッシュの黒田隆憲のレビュー・感想・評価

ブラックフィッシュ(2013年製作の映画)
4.6
幼少の頃大好きだった『鴨川シーワールド』にひょんなことから出会い直し、年パス会員になって時間があれば通うほどハマっている。その流れで鴨シーの写真をインスタに上げるようになってから、海外の動物愛好家から時々ものすごく攻撃的なコメントやメッセージを受け取るようになった。

中には「お前のような劣等民族を殺してやりたい」とまで書かれているものもあって、そういうファナティックな連中は論外なのだけど、例えばフランスでは2023年以降は海の哺乳類を水族館などで飼育するのが禁止になる法案が通るなど、イルカやクジラに対する国際的な論調は変わりつつあるのは確かなのだと思う。

そんなわけで、水族館好き、シャチ好きとしては複雑な思いを抱きつつ本作を鑑賞した。

家族から引き離され、劣悪な環境で飼育されていたシャチが人間を襲ってしまった「事実」を基軸に描かれたドキュメンタリーで、隠蔽的な水族館の体質や、シャチの習性を無視した「調教」の仕方などについても暴いていく。

もちろん、ここに描かれていることは実際にあったことであるが、「シャチやイルカは野生に戻すべき」という作者の強い主張に基づき、いくつかのケースを恣意的に結びつけている編集方法には首をかしげざるを得ないところも多かった。

確かに、動物をショーの「道具」のように扱う施設は国内外問わずある。水族館好きとしては、見ていて心が苦しくなるような場所も正直いくつか思い当たるけど、そうではない施設ももちろんたくさんあるし、むしろ事故もなく動物たちを愛情たっぷりに育てている場所も知っているだけに、そして動物を「飼育」することは、その動物の生態を知る上でも、人間との共生を探る意味でもとても大切なことである面も知っているだけに、本作を見ていて心が引き裂かれるような気持ちに何度もなった。

動物を飼育しトレーニングすること、その功罪に簡単に白黒を付けることはせず、これからも丁寧に考えていきたい。改めてそう思わせてくれたという意味でも本作をこのタイミングで観ることができたのは良かった。
黒田隆憲

黒田隆憲