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ブラックフィッシュのIIDAのレビュー・感想・評価

ブラックフィッシュ(2013年製作の映画)
5.0
想像以上の辛さだった。
オルカ、フリーウィリー3作と素晴らしいシャチ映画を観てきたが、この現実に起こったシャチによる死亡事故のドキュメンタリーだけは、とても自分には耐えられないのがわかっていたのであえて観ることを延ばし延ばしに避けてきた。
だけど、高まる一方のシャチ愛に、このまま逃げて観なかったことにしてよい作品でないと思い、意を決して鑑賞。

当時の通報音声に始まり、元調教師や関係者達のインタビュー、事故シーンも含む数々の記録映像、裁判や報道の様子、過去のシャチ事故の歴史と検死報告、隠匿、果てはティクリムを捕鯨した業者当人のインタビューや捕鯨時の記録映像までもがあり、その貴重で価値ある内容の濃さに驚いた。

シーワールド及びシャチビジネスに携わる側の強い隠匿体制からよくぞ、ここまでのドキュメンタリーを世に出してくれたと賞賛しかない。
後世に残すべき素晴らしいドキュメンタリー。人類必見と言っていい。

案の定、私は開始数分で激しい体調不良に襲われた。
本当に突然の胃痛と貧血、情緒不安定(いつものメンヘラと笑えるレベルではないヤバい精神ショック)を起こしながら、必死に観た。
シャチが好きなら観る選択しかなくなる辛いけどシャチへの真の強い想い伝わる良作だったから。
だけど軽い気持ちで決して観てはいけない。
事故の生々しい衝撃映像が多々あるからだけでなく、それ以上に水族館にいるシャチの境遇の悲惨さに気がおかしくなりそうだからだ。

わかってたけどね……動物園もサーカスもみんなそうなんだって……。
でも、何となく知ってたから距離を取ることでいち人間側としての自衛をしてきた。
忘れる日もあった。
でも、これがやっぱり野生動物を人間が飼う全結果!!
忘れちゃいけなかった!!忘れたフリも!!
忘れないで心を強く持って常に向き合う問題だった!!!!
それしかこの苦しさを止める方法はない。

事故が起きないほうが奇跡だったし、その奇跡は全て連れてこられたシャチ側の恐ろしいまでの忍耐力だけだとよくわかった。
映画オルカで描かれたシャチの恐怖と生態はフィクションではなくあれがリアルだった。
フリーウィリーは美しいけど読み通りの天国の物語というのも…。

夢は野生のシャチの群れに逢いに行くことと最近公言していたが、彼らのテリトリーに行っていいのかもわからなくなってきた。
海洋ウォッチングならいいだろうと思っていたけどそれさえいけないような気がして苦しい。
海洋専門家とか地元の人だとか以外のただのミーハー人間が逢いに行くなんて邪魔なだけじゃないだろうか。
こう考えることも偽善だろうか。
頭悪いのにあまり考え込んでもすぐに正答は見つからない。
シャチのことまだまだ知らなすぎるから生態系や彼らとの関係を学んで、いつか心が決まったらまた考えよう。
その時に、逢いに行っていいのかわかる気がする。
そんな、シャチ大好きな私に運命のドキュメンタリー作品でした。
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