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ヤノマミ ~奥アマゾン 原初の森に生きる~のちらりのレビュー・感想・評価

5.0
数年前、適当につけたTV画面にはヤノマミ族の母親が産後赤子をそのまま育てるか、精霊に還すか、と言う場面が映っていた。釘付けになった。彼女は静かにバナナの葉に我が子を包み蟻塚に放り込む。そしてその母親は嗚咽した。感動するとはこう言うことか。それから震えていた。しかし私は果たしてその時その流れた血に対して震えていたかと言うと、そうではなかった。その震えはもはやディティールではないところにあった。人間とは何か、人間らしさとは何か、その生き方、在り方を徹底した善悪、正と不正から遠く離れたところからレンズを向けていて、だからこそ逆にとてつもなく「生臭い」のだ。実際に延150日間にもわたる大変な取材だったそうだが、取材班の精神力に尋常ではないものを感じたし、個人的にはこのドキュメンタリを一蹴する人とは本質的には分かり合えないだろうと思える真髄に迫った映画だった。
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