MasaichiYaguchi

幸せのありかのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

幸せのありか(2013年製作の映画)
4.0
世界各地の映画祭で観客賞を受賞したこのポーランド映画を観ると、改めて「生きる」ということを見詰め直したくなる。
1980年代の激動のポーランドからスタートする物語は、社会の喧騒をよそに身体に重度の障害があり、更に知的障害で植物状態と医師から診断された幼いマテウシュが、家族の愛情に支えられながら子供から青年へと成長していくさまをユーモアを交えながら描いていく。
本作は実話に基づき障害者を描く映画だが、主人公マテウシュ役のダヴィド・オドロドニクの迫真の演技が素晴らしく、最初から最後まで心を鷲掴み状態だった。
電車や階段等、街でハンディキャップを抱える人を見ると何かしら手を差し伸べたくなるが、その場限りならともかく半永久的となるとどうだろうか?
この重度のハンディキャップを持つマテウシュに対し深い愛情を注ぎ続ける両親の姿を見ていると、素直に頭が下がる思いで一杯だ。
そして本作を観て、障害を持つ人に対して外見から勝手に判断してはいけないことも知った。
マテウシュのように重度の障害を持っていても、普通の青年と同じように魅力的な女性に惹かれて恋もするし、喜んだり悲しんだり、怒ったり、失意に沈む時もある。
特に本作のマテウシュのように一般社会との接点が少なく、擦れていない青年が抱くピュアな思いはストレートに胸を打つ。
原題「Chce sie zyc(私は生きたい)」の意味するところが、主人公の成長と共に強く伝わって来て、「植物」のように惰性で生きているような私を含めた人々に真に「生きる」ことを問うているように思う。