パワードケムラー

THE NEXT GENERATION パトレイバー 第6章のパワードケムラーのレビュー・感想・評価

4.5
 第6章EP10にしてとうとう待ち望んでいたレイバー戦! それも相手は軍用レイバー・RT-99 バウークという旧作ファンをワクワクさせる戦いを展開してくれた!

 第2章で語られていた「リボルバーカノンは37mmの“散弾“を撃つ」という設定や、旧作でもあった「犯人を殺害しないという日本の警察の考えに基づくレイバーの制圧には、対象のコクピットを貫くのではなく、足関節を砕く。移動する相手にこれを狙うのが至難の業」といった今までの設定を回収しつつ、(色々な意味で)予算の都合上大立ち回りできないので、それをどう制圧するかを描いていて素晴らしい! これぞ待ち望んでいたロボット映画! 実写版パトレイバーだ!

 戦車のようなレイバーによるカーアクションや、横転するパトカー、爆発の連続を観た時に興奮しなかった視聴者はいないだろう! これが求めていたものだ! 押井守監督は海外ドラマを徹底的に研究したと言っていたが、カメラワークや演出だけではなく、ハリウッドのワクワクも持ってきてくれた!

 その上、そこに至るまでには衒学的なスパイ問題や明と佑馬の微妙な関係を描く温泉旅館など、大満足の作品だった。

 それに対してEP11は青春をテーマにした泉野明という人物の掘り下げ。人間の記憶とは都合の良いもので、甘い記憶はどこまでも美化されるのに苦い記憶は有耶無耶になったりする。佑馬の後押しで明は思い出の美しい世界に戻ることとなるが、その中で断片的に思い出される苦い思い出。そして気がつく、青春はあんなに美しいものでも甘く優しいものでもなかったと。悩んで苦しんで、裏切られての連続で涙を返した日もあったと。

 レイバーVSレイバーという『パトレイバー』シリーズの花形エピソードの後に、人間の人生ドラマを入れるのは見事だと思った。

 この第6章は実質的な最終章で、第7章は総集編と映画『機動警察パトレイバー2 The Movie』のエピローグにして、『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』及び、そのディレクターズカット版『GRAY GHOST THE NEXT GENERATION -PATLABOR-』のプロローグであるため、これが三代目特車二課のドラマシリーズにおける最後の物語である。