かたゆき

ウォーリアーのかたゆきのレビュー・感想・評価

ウォーリアー(2011年製作の映画)
2.5
総合格闘技の世界で互いに確執を抱えた兄弟がそれぞれ命を削ってまで戦い抜く姿を描いたスポーツ群像ドラマ。

見所は、トム・ハーディやニック・ノルティをはじめとする男くさい役者陣の文字通り血沸き肉躍る熱い演技のぶつかり合いでしょう。
天才肌の弟と不器用ながらも家族のために必死になって戦い抜く兄貴、そして過去に色々と問題を抱えてしまった父親…。
ベタながらも最後まで熱いドラマが展開されていきます。

ただ難点は、いくらなんでもエピソードを詰め込みすぎなところでしょうか。
例えば兄貴。
難病を抱えた娘の治療費がかさんで家を手放さざるをえなくなる。
何とか借金を返すために身一つで昔なじみのジム経営者の元を訪れ格闘技の世界に挑むのだけど、そのために教師の職をなくしてしまう。
ぎりぎりまで追い詰められながらもトレーニングを重ね、やがて世界最高峰の大会への切符を手にする。
かつての教え子や上司も次第に勝ち進んでゆく彼に少しずつエールを送りはじめ、そして、最後まで反対していた妻も…って、これだけで映画一本いけますやん(笑)。

例えば弟。
イラクからの帰還兵である彼は、常に謎めいた存在で何か心に闇を抱えていることを窺わせる。
でもその天才的な格闘技のセンスでもって大会を勝ち進んでゆき、世間の注目を集めるように。
すると彼の戦場での過去が明らかにされ、実は仲間の命を救った英雄であることが判明する。
入場曲を持たない彼のために自主的に集まってアメリカ国歌を歌う海兵隊員たち。
だが、決勝進出を決めた直後、さらに衝撃の事実が明らかとなるのだった…って、こっちもこれだけで映画一本いけますやん(笑)。

そして彼らの父親。
かつては子供想いのよき父だったのに酒が原因で身を持ち崩し妻に暴力を振るって今や何もかもを失ってしまった。
せめて孫と穏やかな時間を過ごしたいと決死の覚悟で禁酒しているのだが、彼の息子たちは決して父の過去を許しはしない。
そんな彼にまたもや酒の誘惑が…って、これも映画一本いけますやん(笑)。

さらには弟にスパーリングでボコボコにされリベンジを誓うヤツやら今や伝説となったロシアのチャンピオンやら、いろいろ出てきて後半はもう何が何だか分かりません。
もっと軸となるお話に焦点を絞って、無駄なエピソードを削って、もっとスリムに出来たんじゃないでしょうか。
観客に楽しんでもらいたいという監督の有り余る熱意だけは伝わってきたので残念でなりません。
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