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HOTEL ホテルのLEONkeiのレビュー・感想・評価

HOTEL ホテル(2001年製作の映画)
3.2
〝いったい〝偶然〟は何を生み出すのか…〟

イタリアはベニスのとあるホテルを舞台に、その従業員と映画撮影のため訪れた宿泊客たちの物語。

いきなり冒頭衝撃的なシーンで物語は幕を明けるが、この映画は内容よりむしろ制作方法に注目する。

この映画はフィギス監督による実験的映画。
監督が出したルールは5つ。
①役者は自前の衣装で出演する
②ヘアメイク係はいない
③送迎の手配はしない
④ギャラは全員同額
⑤本作品には台本は存在しない。役者による即興劇となるが怖がる事はない。
と言うルールだ。

デジタル撮影(2001年当時はまだそれほど普及されていないであろう)やビデオカメラを使ったり、カメラ・音声・照明・台車なしの独自の多機能ハンディカメラを作って撮影したり…。

独特の映像は手ブレや暗視カメラを使ったり、構図を無視し役者に焦点すら当てない自由でその場その場の臨機応変な感情のままに撮影した印象。

役者たちが互いに話し合い、展開や台詞をアドリブで進めていく。
時に4分割された画面でそれぞれ同時進行で、魅惑で滑稽な演技するが不思議と物語はつながっていく。

これは監督が計算しているようで、まったく計算していない想定外の〝偶然〟の魅力を実験的に導きだしたかったのではないか。

考え尽くした台本と監督の描くコンセプトやイメージする映像、綿密に計算したカメラワークや役者の演技など全てを排除したらどうなるか…。

個性的な役者陣も1カット単位では魅力的で映像の面白さがある反面、はやり自分は台詞が単発的で映画としての一体感に欠けるように思える。
物語自体が奇抜で面白い展開があるのに、即興がそれを殺してしまっているのではないか。

ただ、このような映画作ることに賞賛を与えるべきだろう。
興行面を考えたらこのような実験的映画は難しいはずで、それでも完成させた事に意義があるのではないか。
新しい事をやるには必ず最初があり、失敗を繰り返し新しいモノが生まれるのだから。

偶然から生まれるモノは時に素晴らしいモノを作り出し、計算しても作れないモノを生み出す可能性を秘めている。

ちなみに冒頭の衝撃的シーンは映画のパッケージ(Filmarksではピンボケで分かりにく)のタイトルロゴにヒントがあったと、鑑賞し終わったときに納得。


人生においても〝偶然〟が巻き起こす想定外の出来事がたくさんありますよね。
暇つぶしで入った書店で面白い本を見つけたり、たまたま隣に座った人と話が合って仕事をするようになったり(実際あった事)、いつも乗る電車が1本遅れた事によって…ときには悲劇も。

そう考えていくと〝偶然〟は、なんて素晴らしくも残酷なモノなのか…すべては〝偶然〟で成り立っているのではないか…と思うほどです。

ここFilmarksでフォローしてくださった人々も〝偶然〟の出会いで、普通なら出会う事のない映画を教えてくれる素晴らしい〝偶然〟を与えてくれていると感謝します…(u_u)
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