くるみ

劇場版 世界一初恋 横澤隆史の場合のくるみのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

2014/05/14
スクリーンでBLアニメを見たらどういう気分になるのかなあ、と思って行ってきました。
私自身のBL歴は長いのですが、現在は嗜む程度になっていて、原作はちょっと読んだ程度、今まで公開されたBL実写映画も未見です。でも、あれだけ世間から隠れなければと言われてきたジャンルがここまで市民権を獲得したんだと思うと感慨深くなってきましたね。

アニメ映画としては、画面の密度が低いのがもったいなかった。「まどか☆マギカ」や「Tiger&Bunny」に比べると、時間も予算も少なすぎるのは承知の上なんですが、スクリーンサイズだから背景の隙間が目立ってました。特に、編集部の職場風景はもっと雑然とさせて欲しかった。
それから、BLはキャラクターありき!なので、キャラが美しく描かれているかどうかは最重要ポイントなんですが、絵作りに工夫が少なくって。アクションがないぶん、アオリやフカンなどの構図を盛り込んで欲しかった。でも、桐嶋のゆるふわ髪に二、三本のアホ毛が浮いているのは徹底されていて可愛かった。

内容については「クリシェが好き」というBLファン最大派閥の好みにマッチしてるなあと思いました。
本作に出てくる「朝チュンから始まる」も「写真で脅される」も「年上の同僚に妙に絡まれる」ももBL界では定番中の定番です。私も「あーっ!これこれ!知ってる!カップルの片方が結婚指輪嵌めてるって引っ掛けだと、オチは女除けか死別か何かのバツゲーム辺りだな。読める読める!」てなりました。
でも、好きな人はこのクリシェにぜんぜん飽きない。○百回も見た!でも好き!萌える!てなります。水戸黄門が受けるのと同じです。
いやもう、ネクタイ引っ張ってのキスシーンは、BL界リーマン部門の印籠が出たと思った。崇め奉ってひれ伏しますよ。

だけど、萌えとは不思議なもので、受ける人には受けるけれど受けない人にはまったくダメ、という属性があります。
BLファンでも、ホモだったら何でもいいわけではない。
カップル描写も、実際のゲイに近い二人が好きな人もいるし、フィクションなんだからリアルなのはイヤって人もいます。ストーリーでも「男同士の恋愛への葛藤」が不可欠だと感じている人から「そういうの面倒くさい」と思っている人もいます。千差万別なんです。
私は「クリシェは好きだけど工夫が欲しい」派なので、この話展開はちょっと辛かった。
他の人の感想では好評なので、好みの問題なんでしょう。

でも、ジャンルは時間とともに成熟していくので、クリシェの多用以外の萌えも今はたくさん生みだされています。
私個人は、BLって隠れなきゃいけないという考えが根強いから多様化し辛かったんじゃないかと思っていて、差別や偏見が減って裾野が広がった現在では、類型的じゃないBLも珍しくなくなった。もしまたBLアニメ映画が作られるのなら、今回とは違うタイプのお話になればいいなと感じました。
と、斯様にジャンルの成熟を望んでいる私ですが、「ありのままの自分を見せるのよ」はテリトリー内で十分ってタイプなので、BL映画をもっと作って欲しいとかおおっぴらにホモの話がしたいとかは思わないんですよね。これも個人差。
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