クシーくん

英国万歳!のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

英国万歳!(1994年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

18世紀後半のイングランド、温厚な名君ジョージ3世が突如として乱心、周囲は豹変した国王に振り回され英国は危急存亡の秋に陥る。息子のボンクラ王子ジョージ4世が王位簒奪を狙う中、王の病状はますます悪化していくため、評判の精神医に相談をして…という話。

ランカスター朝やテューダー朝ならともかく、ハノーヴァー朝は現在の英国王室とダイレクトに繋がっている訳で、しかも王の病気は遺伝性の病気ということなので、この話はかなり危うい。日本ではとても考えられないと正直思ったが、今のチャールズ3世から9代前、となると夭逝を含めても200年前、日本で言えば孝明天皇のお父さん仁孝天皇の時代である。そんな前の天皇の話であれば意外と出来るのかもしれない…か?

問題を抱えた王を民間人が助ける、というテーマは「英国王のスピーチ」でも見られたが、本作のジョージ3世と主治医のウィリスは全く馴れ合わないのが良い。今の映画だと最終的には二人の間に分かち難い絆が生まれる展開になっても良さそうなものだが、ジョージ3世の時代にはそうした態度が許されない。あくまで王は矜持を取り戻し、恩人のウィリスを突き放す。ウィリスもそれを黙って受け取り、最後は笑顔で去っていくのが粋である。

とにかく名優ナイジェル・ホーソーンの演技が最高。温厚でユーモアのある国王から急激に狂気の王に豹変して大暴れする様を違和感なく演じる。
主治医を演じるのはビルボ・バギンズでおなじみイアン・ホルム。作中ほとんどニコリともしない固い表情がとても良き。
あと、ダウントン・アビーで頑固な執事のカーソンさんを演じていたジム・カーターも出演。やっぱり声が良いよね。

アカデミー賞の美術賞に選ばれているだけのことはあって、セットから衣装、小道具に至るまで全てが本格的でそれらを観ているだけでも飽きない。特に最初と最後のシークエンスはかなりお金が掛かったのではないかと思う。

「私たちは家族のモデルになるのだ」「笑顔を見せ手を振れ、それが仕事だ」華やかなエンディングに比してなんとも寂しい台詞なのがまた良い。
王はどこまでも孤独なんだなあ。

個人的にはかなり好きなんだけど、円盤化されないのは残念。
クシーくん

クシーくん