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メイズ・ランナーのJIZEのレビュー・感想・評価

メイズ・ランナー(2013年製作の映画)
4.2
"その巨大迷路(メイズ)はどこまでも迫って来る⁉︎今何をするかが重要,行動を起こせ!出口を探せ!"...絶望的なディストピアン最高!!160万部の売上を記録したヤングアダルト小説を実写化。59ヶ国で初登場No.1獲得,全世界で興収400億円を叩き出した今作。正直,同じヤングアダルトの米国小説モノでも『ハンガーゲーム』や『ダイバージェント』の面白味なんて比べものにならない程,のめり込みラストに叩き落とされました。要は①巨大迷路に潜む謎②この場所に送り込まれた謎③3年間,とど凍る現状の謎...大きく分類してお話の本質はこの3つです。①と②は核心部な為,この評論では③についてほぼお話します。

まず,結論から述べますと,近未来の退廃ディストピアン側の『巨大迷路(メイズ)』とボックス供給や物資供給を促し安定維持を保つ平和側の『グレード』に隔てる対極的な"2世界対比"が推進力を促す要因として楽しめた。グレード内部に佇む四方の壁も生死を隔てる境界線として重厚的に佇みディストピアンとユートピアンの一線を線引きする役割を担います。巨大迷路の内部も❶歯車が狂う際の耳障りなノイズ(機械)音,❷機械仕掛けの怪物,❸100フィート以上の壁が密接的に合わさり"死"と隣り合わせで絶望的な禍々しいディストピアン感は迷路攻略を投げ出したくなる程感じました。

❶"歯車が狂う際の耳障りなノイズ(機械)音"では幻想(虚偽)と現実を濁す常套手段としたメタ的演出?と類推せざる得ない程,劇中で序盤から多用されますが疲労気味なランナー達の巨大迷路に対する苛立ち,激情,心拍音を音源上で投影するメタファーもダークサイドを強調する上で効果的でした。今作の舞台(グレード)は壁のコンクリートを除くと平坦な自然描写が多くを占める為,近未来とはむしろ真逆的です。身なりでもナイフや竹槍,水,ヨレヨレの服..と古典ファンタジック映画で起用されがちな持ち物身の着飾り方を施し近未来と古典風味な登場人物たちの外観は非常に効果的な対比手段だったと感じます。

❷"機械仕掛けの怪物"ではネタばれラインな為,存在意義やランナー達を狙う意図では深く語れません..が一言で例えれば蜘蛛型エイリアン!!です。巨大迷路の内部構造を機械的にも熟知してるのかスピーディに地面を這い回り不気味な身動きでランナー達(獲物)に襲い掛り捕食しようとします。蜘蛛側からすれば"巨大迷路=巣"の認識なんでしょう。中盤,ランナー達が怪物側のアジト?で"ある罠"にハマる事から壁システムのループ的循環が狂い無数の怪物がグレード側に入り込み少年たちが慌てふためき大パニックに陥る場面..良かったです!!周囲を取り巻く絶望感は勿論,襲来の残酷加減が事前まで割と平穏描写が続く為かディストピア感も強調され構成面の配置仕方でも最高でした。

❸"巨大迷路に佇む100フィート以上もの壁"では不気味さ!!ですよね。この雰囲気or展開どこかで?と思い返すと『ハリーポッターと炎のゴブレット』のヴォルデモート卿と対決するあの場面だ!と思い出したんですが不気味度or恐怖度で言えば断然に今作の方が勝ってました。壁が毎分呼吸する如くランナー達の行方を阻む為,遠のき激走する以外に術はなく"挟まれる恐怖"は今作鑑賞後に改めて余韻に残りました。要は,1日毎に迷路の仕組みが調整(変更)されランナー達の絶望度が比例し増すという"不条理設定"が迷路脱出を図る上で奥深いと思いました。特に先代のランナーであるアルビーやミンホは迷路の仕組みを「暗記してる!」と述べますが,私からすれば???な状態で何億通り以上ある迷路構図を暗記?とまぁそこはフィクション任せですね。グレードに派遣される1人目アルビーは現在までに3年間居座ってた訳だから暗記出来なくも感は納得の余地として考えられます..単純に巨大迷路の内部構造を暗記する行為自体が気が遠くなるお話。

物語面でも冒頭トーマスが"ボックス"という新入りを送り込む貨物エレベーターに乗りグレードに運ばれますが伏線の仕込みも割と充実してる事に高評価でした。例えば"WCKD"の会社名や"水中で溺れる人間",テレサが握っていたメモ「彼女で終わり」,"WCKDは正しい"等,走馬灯描写を繋ぎ分かり易い範囲内でポンポン抽象的にも伏線が提示される為,入り込みやすい構造でした。グリーバーの体内から今作のキーアイテムを引っこ抜く描写は怖がり過ぎて笑いましたが。

またグレード内部での派閥二分化。要は巨大迷路から脱出を希望する行動側と居座り脱出を拒む平和主義側の内部対立。特に派閥のリーダーとなるトーマス(希望側)とギャリー(否定側)ですよね。ギャリーに関してはグレードに貢献する偉業をトーマスが到着する前に何か成し遂げてたのか,という権力を持ち得る故の疑念は深々とありますが..まさか口だけ権力者感も正直感じました。序盤はトーマスの突飛的な行動が死や襲来,思わぬ送り込み等,災難を招くと散々ギャリーから罵られますが中盤から終盤にかけトーマスがある大きな偉業を成し遂げグレードの住民に高々と表明した事で信頼を買い派閥闘争が更に激化する訳ですね。ギャリーは安全を第一に考え変わらない未来を望みますがトーマスは真逆。"今"抱える現状(問題)を打破し出口(解決)を高らかに唱えます。2人の価値観不一致が物語を盛り上げる上で終盤,更なる悲劇を招く訳ですがあのディストピア感も崩れゆく雰囲気が好きでした。なんせトーマスとギャリーグレード滞在日数は3日と3年ですから。トーマスが3日で巨大迷路を○○するって何か既存的な能力面で裏があるんじゃないか?と2部作目の伏線回収として仄かに期待してます。

他否定面では新入りを護送する定期的なボックスと資源物資の供給..で月1設定の裏付けは感や護送されてから数日後に名前のみを思い出す理由付けも自然過ぎて逆に不自然な点。1人目の犠牲者ベンの背景描写が比較的薄過ぎた構成。ユートピア感の最高潮も初日,宴描写がMAXでしょうとか。敵側の振り幅(種類or能力)もグリーバーで一貫するならもっとグラグラ揺さぶっても良かったように感じた。種類も能力も一貫的に同様なら終盤の惰性が否めない。あと上述しましたが,トーマスが来た時点で当初グレードに初めて派遣された1人目から約3年間の空きスパン..あまりにも状況現状が進展しなさ過ぎではありませんかw話を聞く限りグリーバーの一体も倒せてない訳だし脱出方法の鍵を掴む訳でもないと。トーマスとテレサの派遣された理由が逆に2作目で明確に知りたくなりましたw空白の2年間の使いみちが今作1番否めない構成でした。。グリーバーに刺された後遺症として身体が蝕まれ奇病化する設定もゾンビぐらいに変貌すれば楽しめたかもしれません。ギャリーがトーマスに対し秩序の乱し強く訴えかけますが原因として3つ...しかし,言わせてもらえばどの言い分も底が浅いというか矛盾してる!❶ベンの死も全く関係なければ❷アルビーの○○もむしろ真逆的な役回りを施す上でのあの顛末❸女性初であるテレサ輸送もトーマスと何ら関係なし。従い,ギャリーの精神は巨大迷路の絶望に既に呑み込まれ思考自体が常識を逸脱し乗っ取られてたのかもしれません。彼の最終顛末を考慮すれば最後までお前は自分勝手だな!という悪印象です!!

従い,巨大迷路を巡る場面では"刃"を激走する描写が次々に壁が襲い掛り1番唖然とさせられました。いい意味でです。終盤,巨大迷路を"ある8ケタの謎解き"を解き脱出する訳ですが扉1枚を隔てる別離感..近未来と過去を繋ぎ合わせるあの瞬間..物語のトーンが一気に様変わりし寒々しい変容ぶりはとにかく凄い!!"EXIT"のデジタル文字が妙に歪んだ印象を与えます。世界を救うWCKD計画やフレア(ウイルス)の説明も描写自体が急ぎ過ぎて印象に薄いです。引き続きギャリーの自由と混乱を巡り放つ「迷路が家だ!」発言には少し涙ぐみました..唯一感動描写だと思います。キャラ的にはミンホとニュートがいい味を出しお気に入りでした。シリーズ三部作完結の続編2部作目『Maze Runner:The Scorch Trials(原作)』の公開も米国では今年9月18日に決定済みたいなので期待!!ER鑑賞後に2作目のティザーが少し流れましたが舞台は"Scorch=砂漠地帯"。今作の巨大迷路に引き続き謎の原因に対し奔走する彼らの無我夢中さに期待します。文字数が大容量になりましたが実はまだまだ語りきれてません。。最後までご一読頂いた方有難うございました。『ハンガーゲーム』や『ダイバージェント』より何重もディストピアン最高!!リアルタイム劇場で是非,お勧めです!!
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