チッコーネ

少女たちの遺言のチッコーネのレビュー・感想・評価

少女たちの遺言(1999年製作の映画)
4.5
かっちりジャンル映画していた第1作とは、全く異なる作風に驚かされる。
さまざまな技法が駆使され、アートの域にまで達す「日記帳」の開示から始まる冒頭では幽玄な水撮も登場、物語の行方を暗示する。

女子高生たちの生態を切り取る数多のカットには、伸び伸びと自由で、底抜けに明るい演出が通底。
「通過儀礼」として語られがちな女子高の同性愛、教師と生徒の淫行といったモチーフが盛り込まれながら、大人や男性の目線に絡めとられ、型に嵌められることはない。
これが90年代韓国における男性監督の作品とは、俄かに信じ難いほどだ。
ホラー演出もあるにはあるのだが、スタイリッシュな撮影と時間軸を撹乱する編集、そして必要以上にリアリティを追求しない作風に包み込まれ、幻想的な雰囲気。
しかしクライマックスでは大量の少女エキストラを統率し、迫力たっぷりの狂騒を現出させている…、一体どのように絵コンテをまとめ上げ、撮影に臨んだのだろうか?
私の目にはとてつもない離れ業に映った。

メインキャラクターを演じる3人の女優たちも、それぞれに魅力的。
特にキム・ギュリの瑞々しさは特筆もの、まだ新人だった彼女のポテンシャルを引き出した演出力に、感嘆した。
クラシカルで、どこかメルヘンチックなテーマ曲も素晴らしく、エンドロールでは思わず落涙。
韓国映画全体の中でも、世界のLGBTQ/青春映画の中でもお気に入りの1本を発見し、興奮…、良い意味で予想を裏切られた。