MikiMickle

Mommy/マミーのMikiMickleのレビュー・感想・評価

Mommy/マミー(2014年製作の映画)
4.6
ダイアン46歳。見た目はケバく、気も荒い。夫の死後、ひとりで生活していたところ、ADHDで施設に入っていた一人息子のスティーヴが放火をおこし、施設から追い出される。注意欠如・多動の障害のあるスティーヴは、時おり衝動を抑えられず暴力的になってしまう。
さらにダイアンは職を失い…
そんな時、向かいに最近越してきたカイラという女性と二人は知り合う。彼女は休職中の教師で、数年前から吃音症を煩い、うまく話せない。
それぞれに問題のある3人は、お互いに欠如しているものを埋めるように差さえあって生きていくのだが…

素晴らしい「母」と「息子」の愛の映画。
というと単純な愛の物語のように聞こえるけれど、全然違います。
時おり激しくぶつかりあう二人。
そこに垣間見れる、相手への愛。
父親の不在から、二人ともに不完全ながら「父」でもあろうとし苦悩したりも。
障害故に愛されているのか不安に陥ったり、うまくバランスのとれないスティーヴ。
しかし、母の愛はこの世の中で揺るぎないものだとひしひしと感じる。
ラストにダイアンのとった行動は希望の為であり、本当の愛があるからこそだと思う。
そして、スティーヴの最後の疾走もまた母への想いである。

「ママはいつか僕を愛さなくなる」
「あなたの愛が別のところにむいても、私は愛し続けるわ」
「私たちには愛しかないでしょ」
一見ベタなセリフでも、状況とタイミングと映像センスで、臭くならずに心に染み渡る。

カイラは幼い息子を失ったようで、しかしこの親子を見つめる眼差しは暖かく、彼女がいる事で二人は成長し、カイラもまた本来の自分と自信を取り戻す事ができるのだ。
カイラとスティーヴ、カイラとダイアンの関係も、疑似親子であり親友であり、深く深く繋がっていく。

ずっと1:1の真四角の画面。これは「個人」というものに焦点を当てているからだと思う。ひとりのアップが目立ち、その心情に注目せざるおえなくなる。なおかつ、その圧迫感から息苦しさも感じ…

でもその圧迫感が解き放たれるシーンが2回あって、画面がワイドに広がる

スティーブがスケボーで道路を走り、横で二人が自転車でおいかける。手を伸ばし、空中を開くようなポーズをとるスティーブの手の動きと共に画面が横に伸び、世界が一気に広がる。
心の解放と、3人で歩んでいく希望に満ちたシーン。美しい光。青空。
そこで流れるoasisのwonderwall。
「僕を救えるのはひとりしかいない。そしてその人はあなたなんだ。色んなものから守ってくれる、あなたが僕の魔法の壁なんだ。」
目頭が熱くなる…

2つ目はピクニックに出た3人。幸せな時間からの、スティーブンの輝かしい未来でぐっと広がる。詳しくは書かないけれど、ぼやける人物像・儚げな煌めき・壮大で美しいが緊張感のある音楽。

スローも多用し、光と音楽と共に気分の高揚や喜びなどがじっくりと感じられる。

女性の強さも感じた。出てくる男は皆、いやらしいことばかり考えているような下衆の極みみたいに描かれていて、男性社会での中で生き抜く大変さも。
ゲイであるドラン監督は、差別やゲイの社会的地位から、女性と同じようにみているのだな。

どんな中でも希望はある。が‥‥
MikiMickle

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