よしまる

100歳の華麗なる冒険のよしまるのレビュー・感想・評価

100歳の華麗なる冒険(2013年製作の映画)
4.6
 暫くぶりの北欧シネマ。フィルマのスコアは高くないみたいだけれど、自分は超絶好き!というパターン。
 いやもうなにこれ面白すぎでしょ!

 スウェーデン映画の世界興行収入第3位。スウェーデン人が面白がるのはなんとなくわかるのだけれど、世界的に好評というのがまた面白い。

 まもなく100歳の誕生日を迎えるにあたりささやかなパーティーを開こうとする老人ホームから、わしはまだそんな歳じゃないと言わんばかりに颯爽と脱走する主人公のアラン。演じているのはスウェーデンの超有名なコメディアン、ロバートグスタフソン、演じた当時なんとまだ48歳!なので意外と身のこなしが軽い。

 これを「こんな100歳いるかよ」と断ずるのは容易い。けれども、爺さんに扮した志村けんが腰を曲げおぼつかない足取りでコントをやっているのと同列として観ればどうだろう?コメディというのはそうやって騙され乗せられたほうが観ていてお得だ。

 基本的には脱走した老人があちこち逃げ回るロードムービーの体裁を取っているのだけれど、時折、回想シーンが挿入される。これがまた痛快この上ない。

 少年時代にニトログリセリンでパシリをさせられ爆弾に興味を持つ。爆破実験で人を殺してしまい、精神病院に収容され去勢手術を受ける。
 その後、スペイン内戦、さらにアメリカへ渡りマンハッタン計画に参加して原爆を製造、戦後はCIAと KGBの二重スパイとして暗躍。こっちの方がよほど「そんな奴おるか」って感じだ笑

 けれどそこがスウェーデン。ストックホルムで開かれるノーベル賞、そのノーベル自身がそもそも爆弾の発明者。どう考えても重ねてきている。このアランがいなければ原爆は落ちなかったと考えるのであれば、ノーベルが爆弾を作らなければ…というifが頭に浮かぶ。ノーベル平和賞、なんてものも存在するけれど、そうした矛盾を笑いに変えて風刺しているのが北欧らしい。
 先に書いた去勢手術も現実にスウェーデンで行われていた愚策であり、核兵器開発に力を入れていたことも事実だ。
 なのでフォレストガンプのパクリ、なんて見解はまったくのお門違いで、あんなアメリカ国粋主義万歳な映画と一緒にされたら困る(名作をこっそりdisるw)。

 そうした波瀾万丈な100年を過ごしてきたアランだからこそ、あらゆる場面で裏表なく自身の存在を主張し、自由に生きている姿が微笑ましく、頼もしい。
 悪い奴は簡単に死んでいくブラックユーモアそのものは好き嫌いが分かれるだろうけれど、そこも含めてボクは大好き。
 北欧シネマのマイベストテン入りは確実だ。