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隠し剣 鬼の爪のodyssのレビュー・感想・評価

隠し剣 鬼の爪(2004年製作の映画)
3.5
【幕末の田舎藩】

BS録画にて。
藤沢周平原作の時代劇映画はだいたい見ていたつもりでしたが、これだけは未見でした。18年前の作品。

父が会計不正の罪を背負って切腹したために、中級武士の家柄から下級武士に格下げされた片桐宗蔵(永瀬正敏)が藩の理不尽な動きの中で、やむを得ずかつての同僚を斬るものの、武士に嫌気がさして、という筋書きに、行儀見習いに来ていた若い女きえ(松たか子)との密かな恋という別の筋書きを合わせて出来上がった映画です。

今から見ると、主役の永瀬正敏がもう一つの感。中年になってからのほうが風格も味も出ていると思う。
これにくらべると松たか子は当時二十代後半で、彼女は最近も『峠 最後のサムライ』で役所広司の妻役をやっていましたけど、やはり2004年のこちらの映画のほうが、二十代の華が感じられますね。

表題の「隠し剣鬼の爪」が何であるのかは、最後近くになって分かる仕組み。

幕末が迫っていて、江戸から来て「えげれす(イギリス)」式の教練を田舎サムライたちにほどこす教官の苦労などは、案外、歴史そのままかも知れません。
江戸時代の日本人は走法なども近代的な欧米式とは異なっていたのです。すり足で走っていたらしい。そもそも、日本人の着物は全力疾走するのに向いていませんしね。
近代的な身体の使い方は、明治維新をへてようやく日本人に徹底されることになる。

リアリズムとロマンスがうまく融合した時代劇、と評すべきでしょう。
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