福福吉吉

隠し剣 鬼の爪の福福吉吉のレビュー・感想・評価

隠し剣 鬼の爪(2004年製作の映画)
4.5
幕末、平侍の片桐宗蔵(永瀬正敏)は、以前、女中として勤めていたきえ(松たか子)が嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、嫁ぎ先からきえを自宅へ連れ帰り、療養させる。その後、きえは回復して元気になり、宗蔵はともに暮らす生活を喜ぶが、きえの人生を考えてきえを実家へ帰らせる。一方、宗蔵と同じ剣術の門下生であった狭間弥市郎(小澤征悦)が謀反の罪で捕まるが脱獄し、民家に籠城した。家老の堀(緒形拳)は宗蔵に狭間を討ち取るよう命じられる。

ストーリーとしては、以前レビューした『たそがれ清兵衛』に似ていますが、本作では武士と女中という身分違いの恋を中心に描いています。身分の違いが絶対であった時代の中で、葛藤する宗蔵ときえの想いが良く伝わってきました。

きえは気立てがよく、明るいお日様のような人柄で、とても可愛くて魅力的でした。『たそがれ清兵衛』の宮沢りえ、本作の松たか子、と山田洋次監督の描くヒロイン像は私にとって魅力的で好印象です。

宗蔵と狭間弥市郎が同じ剣術の門下生同士という設定が、弥市郎のプライドが果し合いでしっかり伝わってきて、宗蔵と弥市郎の剣劇は見応えがありました。また、門下生のうち宗蔵のみに伝えられた技「鬼の爪」の存在が明らかになり、いつ出てくるのかワクワクしました。

家老の堀を演じた緒形拳の悪役っぷりは見事で、もの凄く憎たらしかった。

最後までじっくりと味わうことのできる、人の心の有り様を描いた素晴らしい作品でした。
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