odyss

Emma エマのodyssのレビュー・感想・評価

Emma エマ(1996年製作の映画)
3.0
【グヴィネス・パルトロウを見る映画】

グヴィネス・パルトロウを見る映画ですね。

彼女が23~24歳くらいの、美しさの絶頂にあった時代の作品です。彼女はわりに私の好みに合うので、そこに焦点をあてて見ていました。
ちなみに劇場公開時は私の住んでいる地方都市には来なかったので、BS録画にて。

原作は、私は未読ですが、英文学でも最高傑作とされる19世紀初頭の長編小説。しかし、この映画自体はあまり面白いとは感じられません。多分、映画よりは小説という形態に合ったお話なのだと思います。

19世紀初頭におけるイングランドの田舎の風俗を知るには悪くない映画かも知れません。当時の中産階級の暮らしぶりや舞踏会などは、やはり視覚だと明快に分かります。

また、階級意識は英国では今も強いといわれますが、19世紀初頭ですからなおさらのこと。ヒロインもしっかり階級で相手を品定めしています。ただし、途中で意中の男性から叱られたように、下の階級の人間を見下すのは人間として最低。下の階級だからこそ思いやりをもって接しなくてはならない。

女性にとって当時結婚は最大の生存競争でした。(いや、20世紀の半ば過ぎまでそうだったかな。)ですから適切な相手を見つけられない女性はずっと独身でいなくてはならず、それは体面的にもきついことなので、結婚の相手探しは人生の大切な課題でした。

今でも、どういう相手と結婚するかはやはり大切な問題ですから、この映画も今に通じる部分はそれなりにあるでしょう(相手の品定めだとか)。ただ、ヒロインや他の登場人物があまりに鈍かったり、俗物だったりしますし、展開がいかにものんびりしているので、人間喜劇だとは分かっていてもまどろっこしい。
現代人には映画としてあまり楽しめない所以でしょう。

ちなみに原作者のジェーン・オースティンは牧師の娘に生まれ、41歳で亡くなるまで独身でした。いちどだけ年下の男性からプロポーズされたものの、結局結婚には至らなかった(このあたりの事情は、フィクションをまじえながらですが、アン・ハサウェイ主演で映画化されています。『ジェイン・オースティン 秘められた恋』)。

当時、牧師の娘は財産的には恵まれないものの高い教育を受けることが多く、したがって結婚が難しいとされていたようです。つまり上中流階級の男からは財産がないという理由で、下層階級の男からは自分より高い教育を受けているという理由で敬遠されがちだった。そのオースティンの最大の関心事が結婚で、それが小説として残っているのは皮肉な結果なのかもしれません。
odyss

odyss