poco

孤独のススメのpocoのネタバレレビュー・内容・結末

孤独のススメ(2013年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

アーセン・ヴェンゲルさんを彷彿とさせる主人公フレッドが窓の外を見ると、隣人のカンプスと一緒にいる男を発見します。そやつは前日にフレッドがガソリン代としてお金を渡した男テオなのです。
あいつは、自分以外にもお金をせびって詐欺行為を働いてるのか、けしからん!と思ったフレッドは家から飛び出して行き、テオに返金を要求するのですが、相手はどうも要領をえない反応をする。
フレッドは対価として玄関前のアプローチの敷石の間の草むしりをテオに命じます。
仕事が終わっても行くあてのなさそうなテオを追い払うことができず、フレッドは渋々テオを招き入れ住まわせることに。


仏頂面のおっさんと無表情でうなづくぐらいしかコミュニケーションをとらないヒゲもじゃのおっさんが向き合って食事をするシーンはどこか滑稽です。
渋々の割に、自分のメインディッシュを半分にカットして皿に乗せてあげたり、手づかみでごはんを食べようとするテオに食事のマナーを教えたり共に生活しながら(常時仏頂面なんだけど)フレッドおじさんの心の中に何かが少しずつ芽生えて育っていくのが伺えます。(結構ガミガミ叱られてるのにテオが懐いていく様は動物っぽい!)


そのうち田舎町でおっさん二人が生活していることに周囲がこやつらはゲイカップルではないのかと怪しむわけです。
フレッドは一人暮らしで教会しか社交の場がない男ですから、そのコミュニティから糾弾されるのは大変な痛手なのです。
そうしてお互いの背景が徐々に明らかになっていきます。


淡々と描かれている中で、時折フレッドの脳内の妄想が映像化されて挿入されます。
そのシュールな絵面と冒頭から度々流れてくるクラシック音楽(非常に美しい歌声)組み合わせに滑稽さと真摯さが相混じって感じました。
複雑な味わいというのかな。それがとても上手いバランスで保たれています。

この映画は2013年のオランダの映画で原題は「Matterhorn」です。
邦題の「孤独のススメ」とはだいぶかけ離れているし、邦題からイメージしたものとはかなり違うのですが、マッターホルンというタイトルだったら見なかったかもしれず、そういう意味では誘い上手のタイトルだなと思いました。
派手な映画ではありませんが、鑑賞後の後味がとても良い映画です。
poco

poco