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殺人の疑惑のMOCOのレビュー・感想・評価

殺人の疑惑(2013年製作の映画)
4.0
「疑いたくないけど、父さんの口から聞きたいの。絶対嘘はつかないで」
「お前、疑っているんだな」
「私は通報できないわ。だから本当のことを話して。父さんなの?」
「絶対に違う。お前、父さんにそんなことを・・・」
「本当に違うのね」
「当たり前だ・・・」


 韓国三大未解決事件の一つ「イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件」を基に製作された映画です。時効前に公開された15年前に起きた誘拐殺人事件の犯人の肉声が父親の声そのものだった・・・犯人は父親なのか?
 刻々と時効時間が・・・という話です。


 2013年大学院卒業を間近に控え、就職活動に忙しいダウン(ソン・イェジン)は、希望する報道関係の就職先から不採用の連絡があり、面接の時に必ず話が出る、時効まであと十数日になっている事件を扱う映画「1998年のハン・チェジン君誘拐事件」を、親友と観に行きます。映画の最後に犯人の脅迫電話の肉声が流れ、ダウンはその声が父親(キム・ガプス)と似すぎている上に子供の頃から父親が教えてくれていた「最後まで絶対に諦めるな」という言葉が使われていることに恐怖を感じます。

 犯人は父親かもしれない・・・。疑うダウンは父親の生活を探るのですが父は大人しい優しい父親でしかないのです。幼い時に母親を亡くしたダウンは父親と二人暮らし、父親はダウンを溺愛しているのです。

 ダウンは図書館でチンピラ風のシムと名乗る男から電話番号を書いたメモを渡されお父さんに渡すように言われたことから疑問はますます大きくなっていきます。
 数日後、自宅にやって来たシムは玄関で近所迷惑になる大声で「チョン・スンマン居ることは分かっているぞ」と叫びます。玄関を開けると土足で上がり込み大暴れした後「お前の母親がこの男に何をされたか知っているか?全て話すぞ?」とまくし立て、父親は今まで見たことのない顔つきになりシムを殴り付け「二度とここには来るな。今度は殺すぞ」と凄んだのです。

 ダウンは父の留守に「ハン・サンス産婦人科」と書かれた自分の母子手帳を探しだし、母親シム・ミオクの名前を見つけます。

 ダウンは警察官志望の親友ジェギョンに父親チョン・スンマンの前科と母親シム・ミオクの死因を調べてもらうことにします、両親ということは伝えず・・・。

 ジェギョンはハン・チェジン君誘拐事件捜査班にいる先輩に頼んで調査をしてもらうのですがチョン・スンマンは窃盗・障害・詐欺の前科三犯とわかり、死んだと知らされているシム・ミオクは、今も生きていることがわかります。
 
 ショッキングな報告を聞いたダウンはジェギョンと共に母の家を訪ねるのですが、留守のために車内で母の帰りを待ちます。そこに現れたのはシムだったのです・・・。
 二人はシムに絡まれ恐ろしい目にあうのですが、ダウンは望んで母に会います。母親は癌で入院し昏睡していたのです。

 知らせで駆けつけた父は「娘を捨てた母親」と言いダウンを連れ帰ろうとするのですが、ダウンは父を振り切って帰宅します。

 その夜、初めて父親に疑問をぶつけるのですが父親は泣きながら「絶対に違う。お前、父さんにそんなことを・・・」と否定するのです。

 時効まであと4日・・・。皮肉なことにダウンが依頼したチョン・スンマンの調査からチョン・スンマンが容疑者として浮上します。
 時効まであと3日・・・TVインタビューに答えるハン・チェジン君の父親を紹介するテロップに「チェンジ君の父親ハン・サンスさん」という文字を見つけたダウンはコリョ日報のチョンを名乗りハン・サンスさんにインタビューの申し込みをします。被害者ハン・サンスは自分が生まれた病院の院長だったのです。

 取材の初め、ダウンは父親はチョン・スンマンと言い、自分はこの病院で生まれたと当時の父親との写真をみせるのですが「あの時の子供は母親が妊娠高血圧症候群で流産だった」とはっきりした記憶を聞きます。

 ハン・サンスは新聞掲載してほしいと当時犯人から送られた脅迫状を託します、それは身代金の受け渡し場を記す内容でダウンしか知りえない秘密が・・・、ダウンは父親の犯行を確信するのですが・・・。

 時効まであと2日・・・
 容疑者チョン・スンマン確保に向かった捜査本部の動きを聞いたハン・サンスは、昨日の取材で聞き覚えのある名前に驚き、警察に追い付くとチョン・スンマンに殴りかかり、チョン・スンマンは後頭部を床に打ち付けられ意識不明になってしまいます。

 ハン・サンスの怒りは、時効までの限られた時間を奪っていきます。目がさめたチョン・スンマンは声紋鑑定を受けるのですが・・・。

 ハン・サンスは以外な方法で決着をつけるのですが、それは同時にダウンの人生にも影響を・・・。

 話はそれだけでは終わりません。
 犯人は本当にチョン・スンマンだったのか?
 15年前の誘拐の目的は?
 身代金はどこに使われたのか?
 家族3人が揃って生活していない理由は?
 シムが握っていたチョン・スンマンの弱みは?
「あの時の子供は母親が妊娠高血圧症候群で流産だった」のならば『私は誰?』
誰も想像することができない驚愕の事実が驚きの結末を・・・。

 解明されない部分は少しストレスですが面白かったです。ハン・サンスから預かる脅迫状の秘密、死の直前の母親が牧師にする告白、シムがする意外にも優しい最後の電話、訪ねてくる夫婦・・・韓国映画って上手で、見始めると本当に面白くて、誰かに薦めたくなります。
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