アベベチゴベナ

イニシエーション・ラブのアベベチゴベナのネタバレレビュー・内容・結末

イニシエーション・ラブ(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ネタバレしてます。


この映画を観にいくとき、観客の人は2つに分けられると思うんです。

原作未読か、既読か。

という点です。

このサイトのレビューも
ほとんどの人が、既読です!未読です!と断りをいれてからレビューするようになってますよね。

この両者の観客は映画をみるときの心構えも違っていて
未読の人は、どんなトリックがあるんだろう!と推理しながら見ますが、
既読の人は、どうやってミステリーを演出するのだろうと、画面を観ます。
この両者の満足のいく作品であれば、いわゆる「原作モノ」として傑作になると僕は思っています。

長編小説になると、後者(既読側)がディティールが削られて怒ったり、前者(未読側)は、原作ネタが分からなくてストーリーが分からなかったりなど、両者を満足させるハードルが高いなぁと感じています。

「映画は短編小説くらいがちょうどいい」と、巨匠の言葉もそのことを言ってるのではないかと思います。(誰が言ったのか、忘れました!誰か教えて!)

邦画だと有名俳優のキャラが立ち過ぎたり、ラブストーリーが足されたりして大失敗になったこともありますよね。「陽気なギャング」とか…。それこそ堤幸彦監督の「20世紀少年」は漫画長編原作ですよね。結果は言わずもがなですが。


そんなこんなで、両者とも楽しめるのかな……どうかな…と楽しみにしてたんですが、

この映画は、「未読の人のみ!」を対象に作られています。
「ネタ知ってるやつ!来んな!」って感じさえします。

未読の人には、丁寧に原作そのままに作られていると思います。最後まで気づかなかった!って人もいれば、途中で気付いた人もいると思います。
イニシエーションラブの原作でも、途中から違和感が重なっていくような構造の小説です。「あれ?辻褄あわない…、性格変わりすぎ…」と、思いながら、モヤモヤしながら読んでいきます。そこで途中で読み返したりして、仮説立てたりしたりしながら読んでいく人もいれば、読み返すのめんどくさいって人もいて、騙され方は人によってバラバラかなと思います。

映画だと、戻れませんから騙し方は一発でイケるわけですから、あのトリック問題を解決すれば、かなり騙しやすいのではないでしょうか。現に騙された人や、途中でモヤモヤしたりしながらも、楽しんだ人もたくさんいるようですから、未読の人には、成功してるのではないでしょうか。

で、既読の人には本当に不親切です。配慮なんもないです!無です!
最初の1分で、「あのトリック、OOです!」と分かります。その後、楽しませる気ありません。退屈です。
で、その後は懐メロかけながら、「時代感」的なモノで「懐かしいでしょ?どう?CCBとか?どう?」とかなんですが、ほんとどーでもいいよ!
あと、前田敦子が可愛いとか、松田翔太がカッコいいとか、それくらいしかありません。松田翔太が水を飲むシーンはちょっと良かったりしますが、それだけです。エロシーンもないし!
視覚的な、音楽的な、「映画」でのミスリードを誘うような工夫は、ほとんどないんじゃないですかね。セリフの伏線とアイテム的な伏線しかありません。映画しかない力を使って小説を越えられていません。靴がアップになるとこくらいじゃないですか?むしろ指輪のせいで謎が分かりやすくなっててダメじゃん!あと写真見せないせいで逆にバレてんぞ!怪しまれてるぞ!懐メロとか意味ねーし!
あと、原作は語り手側の男が変な思考回路だったりして(特に最初)、信用できない感で読者をミスリードしてるので原作のほうが工夫してるんじゃないかと思います。

まぁ、もしくは中盤までそんな調子で進めるなら、最後に原作ファンもびっくりするように、真相が明らかになった後にもう一つオチを用意しても良かったのではないかと思います。原作読んで見た人は「本当に本当になんもなかった…」としか思えません。ミワコもまた、海堂と浮気してて…とかさ、ないのかよ!

そういや「20世紀少年」も原作通りダラダラやってたのを思い出しました…。

最後にまとめると、未読の人は観たら楽しめるかも!既読の人は何もないよ!という感じです。
最後の画面を2つに分ける演出は好き嫌いあると思いますが、解答がないとスッキリできない人もいると思うので、あってもいいんじゃないですかね。必ずしも2回観れる人ばかりじゃないですから…。全年齢対象ですよね、たしか。

で、エンドロールは地獄です。ほんとに、あんなダッセェエンドロール見たことなかったです。あそこで星-1です。

ぶっちゃけていうと、未読の人は原作のほうが楽しめるんじゃないかな、とは思いますし、
既読の人は、「ゴーンガール」でも観て下さい。ミステリー解決!だけで終わらない傑作です。


最後に。
松田翔太が合コンに参加するシーンと海に行くシーンを入れた予告編の製作者が、既読の人を映画館に運んだと思います。その製作者はナイスチョイス!すごい!と思いました。