LC

ヴィンセントが教えてくれたことのLCのレビュー・感想・評価

4.1
面白かった。

「聖人」に限らず、その人が善のステータスのみで構成されている、とイメージしてしまうことって恐ろしく一般的にあると思う。或いは、いつでも正しい人だ、とか。ただ、そのイメージを当てはめる時、その人がその他の誰かや自分と同じ人であると忘れていることも多い気もする。

立派な人だ。素晴らしい人だ。酷い人だ。つまらん人だ。その他諸々。
直接話したことがないのに、その「人」そのものをそうだと思う傾向は、不思議と宇宙規模で苦労なく観測できる。
そう思う材料は、その人の持つ功績だったり、職業だったり、出身国だったり、時には戦略的に流されたニュースだったり、その他諸々。
そして実際の言動をどこかで見る機会があると、イメージとの差が気になることもあるし、その差を理屈を引っ掻き回して埋めようとしたりもするし。自分が目の前で一言話せる機会では、嬉しかったり傷ついたり、それも様々。

本作の少年のプレゼンに関して好きな点は、仕事で功績残してるし、自分の面倒も見てくれたし、だから良い人です、じゃなかったところ。
少年自身、交流する中で「サイテー」と抗議したり、傷付いたり、公衆電話代と共に吸いカスを手のひらにぶちまけられたりした上で、それを美談にしてはいない。良い人なので、これらには正当な事情があります、的な。
しかし一方で、クズでダメな行いも言葉も態度も、その「人」そのものがクズでダメである証左にもしていない。
もっと言えば、自分はその人のことが好きだから、他者に良い人だと説きたい、庇いたい、的な意図がない。これはやりがちになる人、いるのではなかろうか。庇うつもりが攻撃になってたり。

誰かを神聖化することなく、どちらもその人の要素と受け止めた上で、自分はその人が好きか嫌いか、主観で判断している。
これからもダメなことには「それはダメ」と言うだろうし、交流を続けたいと思う限り何だかんだ周りをうろちょろするかもしれない。とりあえず全額引き下ろされたお金請求しとく?利子つけて。

お母さんマジでストレスがマッハ過ぎるだろうから、凸凹フレンズとはいえ一応は周りに頼れる人が増えて本当に良かった。養育費はちゃんと払われてるんだろうな?あなたは木じゃない。人だ。
夜の女さんは赤子死守するタフネスあるだろうけれど、ひとまずは再就職できるようにと願うしかないか…
色々ある、思い返したり、この先に思いを馳せたりすることが、本当に色々ある。

それでも「Vin」と呼んでくれた瞬間の気持ちがVinの車に乗ってすうっと何度も通り過ぎて行く。何かいい車だったなあ…車に関心ないのに、あの車は何かいいと感じるなあ…
LC

LC