「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」のヴィム・ヴェンダース監督作という事で鑑賞。
1つの事故で運命を狂わされていく男女を描く。「誰のせいでもない」、いや「誰のせいにも出来ない」彼らの苦悩は彼ら自身の心を蝕んでいく。
真っ白な雪に包まれたカナダ、モントリオール郊外。田舎道で車を走らせていた作家のトマス(ジェームズ・フランコ)は、丘からソリで滑り降りて来た少年が突如目の前に現れ、慌てて急ブレーキを踏む。ソリの少年クリストファーは、怪我もなく、無事に思えたが—— 。
少年の母ケイト(シャルロット・ゲンズブール)が呟いた言葉で、背筋が凍った。
「ニコラスは?」
事故の犠牲者はクリストファーではなかった。
淡々と2年、4年、更に4年…と凡そ12年もの月日が流れていく。
一時は酒に溺れ、自殺も試みたトマスだったが。時が移るにつれ、彼を支え続けた恋人サラ(レイチェル・マクアダムス)は彼の元を去り、編集者のアン(マリ=ジョゼ・クローズ)と付き合うようになる。トマスの小説はヒットし、彼は成功を収めたに見えたが…。
シャルロット・ゲンズブールがいつか発狂するんじゃないかという恐怖。この人、他の作品(ラース・フォン・トリアー監督の「アンチクライスト」)のイメージが強過ぎて、存在自体がもはや怖い。
不穏な空気を掻き立てる音楽が俊逸。
レイチェル・マクアダムスのビンタ2発で目が覚めた。あと、何者かがトマスとアンのベッドにおしっこする事件よ。地味に嫌。
「誰のせいでもない」
一見優しく聞こえる言葉だが、所詮は因果応報。誰に責められる訳でなくとも、トマスは自身を責めるし、過去を克服し、世間的に成功を収めたに見えても、それがまた別の憎しみを生んでしまう。
最後はハグで。
憎しみを抱く相手に、愛をもってハグをする。全てに於ける真の解決法はまさにこれに尽きるのかも知れない。
取り立てて何が起きるという訳でもなく、あくまでキャラクターの内面を細やかに描き出すのがこの作品の特質だと思うが、些か退屈かなぁ。
巨匠ヴィム・ヴェンダース監督作という事で、期待し過ぎたというのが本音。