CHEBUNBUN

リアリティのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

リアリティ(2014年製作の映画)
3.7
【ん?まだできていない映画が上映されているんだが?】
『地下室のヘンな穴』、『マンディブル』と2022年はカンタン・デュピュー作品が日本に紹介されて熱い年だ。ということで彼の過去作の感想を書いていく。今回は『リアリティ』だ。本作は第27回東京国際映画祭で上映された作品。カンタン・デュピュー版『ヴィデオドローム』といった印象を受けた。

監督になりたい男が「テレビの怪電波で頭が破裂する映画」の企画を持ち込む。プロデューサーは条件として48時間以内に映画史上最高のうめき声を用意しろと言う。彼のうめき声を探す旅は始まった。一方その頃、少女は猪の腹から出てきた青いビデオテープが気になっている。入手しようとゴミ箱に近づくが、親に止められてしまって中々近づけない。全く異なる話が、思わぬ形で結合していくタイプの作品なのだが、終盤に行くと『ヴィデオドローム』のような展開になっていく。ズバリ、追う者がいつしか「追う」概念に囚われてしまうのだ。これが奇妙なことに監督になりたい男と少女が「映画」、「テレビ」に取り込まれていく。それも同時に取り込まれていくのだ。映画がどんどん複雑な入れ子構造になっていき、「観ている人を観ている」この時の次元がどこに位置するのかが融解して分からなくなっていくのだ。人によっては過剰な演出で苦手に思うかもしれない。しかし、ある対象を追うことで、異界の扉が開くも自分のポジションが分からなくなっていく恐怖をスタイリッシュに描いていて気に入った。

この手の映画は円環構造との相性が良い。本作も円環構造が用いられるのだが、思わぬ形で少女の物語と結合する場面には感動した。

そして何よりも怖いのは、映画館の場面である。まだ完成していないはずである自分の映画が上映されている。不気味な一方、好奇心が刺激され劇場に吸い込まれていく。だが、それは自分の内面との対峙であり、内なる恥じらいと闘わざるえない状況に追い込まれていく展開はクリエイター心理に迫るものがあった。ちな見に、ここの劇場の場面をよく観ると『ラバー』の続編が上映されていることが分かる。カンタン・デュピュー監督ファンへのサービス小ネタである。
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