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二重生活のmemoのレビュー・感想・評価

二重生活(2012年製作の映画)
4.3
濃密に重なり合う人間関係が予想もしない方向へどんどん転がっていって、それぞれの嘘や真実が明らかになっていく。中国の街の息づかいを映し出す映像(ざらっと、じめっとしてる手触り、街の音や空気感、雑踏、窓から見える風景)に、これでもかと生々しい人間の姿と人間模様。ミステリーとしてもラブストーリーとしても引き込まれた。なんといっても、女性ふたりの存在感の鮮やかさ!良い友人のように凸凹が合わさったり、対照的に見えたり、鏡合わせのようだったり。交わらず平行していた線がある地点から重なり合い、またある地点からは分かれていく、という……。最後に主人公が車からふたりを見るシーンの明るいとも暗いとも言えない表情が印象的だった。

ラストで明らかになるもうひとりの女性の事故死の真実ともうひとつの悲劇は(宙に浮く女性のスローモーションの映像のトーンは唐突で少し浮いてた気もするけど)監督の伝えたいものが象徴的に表されてると思った。夫の嘘と裏切り、それを知った妻の行動が交通事故を引き起こすが、それが死に至る直接の原因ではない。人々の嘘やごまかし、裏切り、焦り、怒りが積み重なって、この物語において比較的罪の少なく思える若い女性が死に至る。さらに事件の目撃者として巻き込まれて、現場近くで貧しい生活を送る人も死ぬ。社会的に立場の弱く、貧しい層の人たちが複数人から重ねて傷つけられて犠牲になるという痛ましい結末は、現代社会の歪みが生み出すものではないか。ロウ・イエ監督の社会的・政治的なメッセージが伝わってくるラストだった。
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