JunIwaoka

ミスター・スキャンダルのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ミスター・スキャンダル(2013年製作の映画)
3.5
(原題:The Look of Love)
2015.2.1 @ ヒューマントラストシネマ渋谷

マイケル・ウィンターボトム監督 × スティーヴ・クーガン + イモージェン・プーツちゃんの新作がなかなか日本で公開されないな〜と首を長くして待っていたら、"未体験ゾーンの映画たち2015"のラインナップに発見!面白かったし、有名な監督の新作なのに一般公開されないなんて(そのうちDVDになるだろう)意外だったけど、酷評されているレビューも目立ってそんなもんだったのかな。。

カルチャーが最も盛り上がり、歓喜の黄金時代へ突入した1950年代終盤。ロンドンにストリップクラブをはじめてオープンさせて、ポルノ界の伯爵としてイギリス一の富豪となった実在するポール・レイモンドの半生。
当時まだ裸を見せることがタブーだった時代に、お下劣さを通じて財を成すところは、ウルフ・オブ・ウォール・ストリートと近いけれど、人から金を巻き上げることを目的とした訳ではなく、自分の下劣さを自覚しているからそこ、人が望むものを熟知し、夢を与えて成功していったところが好感。演じるスティーヴ・クーガンからして見るからに薄情さが滲み出ていて隠そうとしていないもんね。
前半は逆境もなんのそので、破天荒なプロモーションとして活用するスマートさ。特に裸の女性を馬に乗せてロンドンを徘徊するアイディアが素晴らしい。次から次へと湧くユニークな発想で、事業を広げていく様子をテンポ良く、スタイリッシュに展開。感情に赴くままで、その薄情さも含めて人間味のあるポールに目が離せない。
後半はさすがはマイケル・ウィンターボトム監督!ということもあって、どんな男であっても愛娘デビーのことを想う一人の父親としての姿と、必然とすれ違っていく侘しさを優しく描く。父親に憧れショービジネスの煌めきを夢見たデビーにはポールのような下劣さの自覚はなく、興行は失敗し自堕落的に。ワガママ娘でありながら、なんでも夢を叶えてあげるのは父親の間違った愛情か。だからこそ裸を観に来たショーの客には受けなかったとしても、ポールの視点でThe Look of Loveを歌うデビーを見つめるシーンにグッとくる。娘のことを想いソーホーのお店を買い占めたポールだったけど、娘を抱きしめることの出来ない虚無を胸に、その人生は成功だったと言えるのだろうか。
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