アブハジア紛争の最中、アブハジア自治共和国とジョージアの境界を流れる川の中州でとうもろこし栽培をする老人と少女の姿を描いた物語。
1992年以降、ジョージアとそこから独立しようとするアブハジアの激しい内戦状態が続いた。そんな戦争状態の中、ジョージアとアブハジアの間に流れるエングリ川の中洲で暮らす祖父と孫娘のお話。
両国の間にあり兵士が行き交う中洲は、どちらの国にも属さない独立した場所となっていた。
お世辞でも大きいとは言えない孤立した小さな土地に小屋を建て、とうもろこしの種を蒔き、冬に向けて備える。必要な物資は小舟で運び、孫娘は中洲で生活をしながら学校へ通っている。
川の流れや鳥の鳴き声が聞こえる穏やかな日常の中に、時折響く銃声が、戦争中なのだと現実に引き戻される。
負傷した兵士がいれば介抱し、中洲を船で横切る兵士が孫娘にちょっかいを出してくれば警戒し、孫娘が恋に落ちるのならば心配になる祖父の行動がとても優しさに満ち溢れている。
両親を亡くした孫娘を大切に育て、家族として見守る寡黙な祖父の姿がとても素敵。
台詞が少ない為とうもろこしの成長が時の流れを伝えてくれる。孫娘も幼女から大人の女性へと少しずつ成長しているのだと感じられる。
それでも、幼女の裸体のシーンは必要性をあまり感じられなかった。
この作品の特筆すべき点としては、ほとんど会話がなく静寂で、自然の音や優雅な風景を最大限に活かした映像で成り立っているところ。
そして、静寂で何気ない日常の中に戦争や大自然の脅威が潜んでいるということ。戦争をテーマにした作品だが、直接的な描写がないところも魅力の一つ。
ラストは大自然の怖さを最大限感じ、壮絶で残酷な現実を突きつけられる衝撃的な結末だった。
静寂で味わい深い作品。