舞台は、東京・東村山にある久米川駅周辺。
近郊ならではの風景に季節の訪れを告げる木々の色が美しい。
私も以前、本作の舞台になっているとはつゆ知らず、久米川駅付近を車で通りかかったときにすごく穏やかで良いところだなあと感じた記憶がある。
そんな東京近郊の街並みを美しく切り取った映像のもと、心に傷を負ったどら焼き屋の店長と、そこを訪れたおばあさんの交流が描かれていく…。
しかし、この街の美しさの裏には暗い過去が影を落としていることが、作中で少しずつ明らかになっていく。
そして人々は今もなお、その暗い過去が投影されたかのごとく、風評に走ったり、それを利用したりしようとする。
いまとなってはもうここまでシビアではないと思いたい。けど、やっぱり意外とそんなものなのかもしれないとも感じて、複雑な気持ちになった。
ハッピーエンドではないかもしれない。
だけど彼は、桜の季節になるたびに、心に刻まれたこの出会いを思い出すことだろう。