odyss

杉原千畝のodyssのレビュー・感想・評価

杉原千畝(2015年製作の映画)
3.0
【作りに甘さはあるが】

多数のユダヤ人を救った杉原千畝の半生を描いた映画。
この種の映画は、映画としての面白さと、伝記映画としての真実性のバランスをとるのが難しいと思うのですが、そういう点で言うとまあまあの出来でしょう。

ただし、善意の人を描いているので、エピソードはどうしても甘めになります。だから、映画を見慣れている人からすれば「あそこはああした方が」とか「ここは余りにお子様ランチ風では」と言いたくなるところが少なくない。でも、何も知らない(そして映画マニアではない)人が見ても杉原氏のことが或る程度分かり、映画としても楽しめる程度の作品にはなっていると思います。

最初のシーンで、戦後外務省を訪ねてきたユダヤ人が「センボ・スギハラは?」と訊いているのに役人が「そういう人は外務省にはいなかった」と答えるのは、「チウネ・スギハラ」が本名だからという典型的な官僚主義のせい。杉原氏は外国人に発音しやすいようにと名を音読みしていた。しかし外務省は杉原氏が本省の命令に従わなかったことを快く思っていなかったため、わざと形式主義に徹したのです。今からすると外務省の姑息さとみっともなさが際立つシーンですが、映画で見ただけだとその意味が分からないかも。そのように、もう少し親切に作った方がと思える箇所も散見されました。

けれどもリトアニアの置かれた立場とか、オランダ領事の関与、根井三郎の協力など、必要な部分はしっかりと取り込んでおり、杉原氏の事績を描いた映画としてはどうにか合格点に達していると言えるでしょう。
odyss

odyss