もとまち

迷い猫/新宿♀日記 迷い猫のもとまちのレビュー・感想・評価

3.9
記者が殺人を犯した女へ淡々とインタビューするだけの内容なのにずっと面白い。無表情を保ちながらも呆れや憤りを薄っすらと滲ませる平泉成の熟達した芝居。それに対する長曽我部蓉子の虚無と諦念が入り混じった「空っぽ」な存在感。二人の静かなやり取りが生む不穏なアンサンブルが素晴らしい。女は理由なき冷たい衝動に突き動かされ、海へ行ったりお墓参りに行ったりする。いったい何が彼女をそうさせたのかは、結局誰にも分からない。もちろん彼女自身にさえ。「父親のような存在を求めていた」なんて最もらしいことを最後に言うけど、本人は全然そんなこと信じてなさそうだし、平泉成も全然納得してなさそうなのが印象的。正面切り返しとセリフの反復は一定のリズムを刻んでいるのに、会話の内容だけ徐々にリズムから剥離していく感じが絶妙で怖い。金属バットによる撲殺シーンと風呂場の血みどろ死体も厭なリアリティがあってよく出来てる。
もとまち

もとまち