完全に観入ってしまった
ピンク映画として制作、何度も改題し公開/発売されているが、そもそもまずピンク/ポルノ映画として全く機能していない
作中の大半を、夫を殺害した妻の述懐を記者である平泉成が聞く、という構成
いわば会話劇なのだが完全に引き込まれてしまった
女性が、それも平凡な主婦が夫を殺して死体をバラバラにして遺棄するという猟奇的、衝撃的な事件があった時、人はきっと背景にセンセーショナルな出来事や異常な性癖があったと想像する
でもそれがなかったら
本当にごくありふれた日常を送りたかった、ただの平凡な主婦だったら
異常な事件が起きた時、それを起こした人間はきっと経歴や思想に異常があると思いたい
自分とは違うと思いたい
でもそれがそうでなかったら
淡々と、だがその異常さを聞き出そうとする平泉成と、夫にも売春相手にも打ち明けなかった平凡な胸の内を明かす女
抑揚のない会話劇ながら胸の内を抉る傑作だ