前半、処理した動物の血が服について染みになるシーン。人間の勝手な都合で命を奪われる動物たちの怨念が実体化したかのようだ。
驚くほど共感性の欠如した父親の元に3カ月も預けられるというだけで最悪なのに、住んでいるのがペットの権利を尊重しない国だった……という"ローファンタジー"の物語。
ちなみに、ここで言うところのペットの権利とは障害者といった社会的弱者の権利と言い換えが可能。というより、かつて優生思想から社会に不必要だと判断された人間を殺害してきたナチスのようなファシズムによる弾圧を犬に置き換えているのがこの映画だ。
社会福祉を削られたために、飼っているだけで税金を取られる犬は家庭内において邪魔者扱いをされ、保護施設(保健所)に連れていかれる。まさにT-4作戦のメタファーである。
ハーゲン役の犬や他の"役者"たちが演技とは思えないくらい生き生きとした表情や動きを見せてくれて、全ての生き物に平等に優しくない世界で必死に生きようとする犬たちのハートフルストーリー……かと思いきや、身勝手な人間共に犬たちが連帯して復讐をするというシリアスなストーリーへ物語は変貌していく。
全体的な内容は『猿の惑星:創世記』によく似てるけど、こちらは痛烈な社会風刺がメイン。誰かの命を大切にしない社会は、あなたの尊厳もいずれ奪い、もしくは既に奪っている。