ヴィルヌーヴ特有の美学が全編に通底していて、冒頭数分から、静的ながら緊張感あふれる画作りに引き込まれる。
アートとエンタメのバランスがとても巧み。視覚、音響的な快楽、きっちり面白い物語、複雑でもありわかりやすくもあるテーマ。わりとケレン味強めな、暗視カメラやサーマルカメラなんかも使った後半の敵陣潜入パートには素直にワクワクさせられる。
詩情というよりは、物語をしっかり動かし、そのダイナミクスで視聴者をノらせる作劇。FBI捜査官という立場ながら主人公は周囲に振り回されっぱなし。全く見せ場なし。そんな彼女の目線、視点、限られた情報量のもと見させられることになり、彼女と同じように動揺したり葛藤したり驚いたりさせられる。