JunIwaoka

ネオン・デーモンのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
4.5
2017.1.14 @ TOHOシネマズ六本木ヒルズ

あどけなさ残る生まれもつ美しさは、野心とともに人の欲に消費されることで、魅了させながらも、汚れていき、若さとともに失われてしまう。永遠に不変的な美とは、死をモチーフとしたポートフォリオの写真だろうか。それは皮肉にも芽生える前の未完成さ。
羨望と妬み。欲望が輝く業界の異常さを、エル・ファニング演じる幼気な少女がネオン・デーモンによって切り刻まれていく様で描く。可愛い子は見惚れられる自分の可愛さや若さを自覚しているもので、クラブのシーンのコントラストが象徴する不穏さを分かっていたはずなのに、自意識が自らを陥し入れる。
メイクアーティストが美を際立たせ、デザイナーやカメラマンが昇華させるが、ものように使い古されるモデルとの関係性が、誰もが心に潜む醜悪さを感化させるところが、この映画の魅力のよう。そして慢心と妬みの血みどろさによって、白いものが黒く呑まれることに恐ろしく思いながらもどこか嘲笑うように見入ってしまうことが怖い。
唯一の美しさとは無自覚であること。それは欲まみれる現代社会ではあまりにも刹那的な美しさか。

これまで押し付けがましいレフンの美意識は苦手だったけれど、ここまで分かりやすくアプローチするとは思わなかった。思わず笑っちゃうような呆気にとられる演出は味があってよかった。ただ安っぽいセリフと不穏なインダストリアル・サウンドが単調すぎるところが惜しい。これ去年観てたらベスト入りしてたかも。
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