ベビーパウダー山崎

ボクシング・ジムのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ボクシング・ジム(2010年製作の映画)
3.5
その場に集まる人間観察。環境(土壌)の変化によって蟻の生態に違いが見えてくるのと同じ。ジッと眺め、会話を盗み聞きし、そこから浮かび上がる暮しや生活、人々の関係性。ラストは常に、その街の実景。
ボクシングジムで熱心に身体を動かす者たちは、それほど裕福には見えないが、表情はすっきりと、みな明日に向かってマトモに生きている。その異様さにグイグイと引き込まれる(面白すぎる)200点の映画『福祉』で映し出された人間のおぞましく必死な顔とはえらく違う。確かにワイズマンは「顔」を撮る作家。
ワイズマン映画にしては短編ぐらいの勢いだが、ボクシングジムに言葉は不要で、肉体と汗が語る90分は至高の時間。