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リリーのすべてのlemmonのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.2
こんな言い方はよくないのかもしれないが、映画にうってつけの物語だと思う。ヨーロッパは性別に対して比較的許容されてきたと思う。女装に対しても、妖艶と捉えて(とはいっても差別はあるだろうが)、面白い存在とする傾向は、他の地域より先をいっていた気がする。クラシック映画を見てきてもそう思う。男性に女装させ、それを美しく撮る。

この映画の見所は、申し訳ないが、エディレッドメイン演じるリリーの苦悩ではない。もちろんそこも描いているが、トムフーバー監督は多分男が女装して、それゆえにより女性らしくあろうとしたリリーの所作に重きを置いているように思えた。

面白いのが、20世紀のヨーロッパの女性の髪型・服装といったところがいちいちおしゃれなのに対し、出てくる女性陣は外見にそぐわない下品な人間ばかり、、、一番女性らしく、所作が美しいのがレッドメイン演じるリリーなのが皮肉な感じだ。美しいということが何なのか染み渡ってくるように伝わった。

またこの映画で忘れられないのが、どんな形であれ、リリーを大切に想っていたアリシアヴィカンダー演じる妻。愛する人を苦しめるのが愛ではない。見守りながら、この世で一番愛した人が、目の前にいるのに遠くへ行く。その葛藤こそ、愛に感じた。
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